第10話

「コンクールのことは、どうすんの」


「……考え中」


「ちょっとでも描こうと思ってるなら、それ塗ってみれば?」




俺は旭奈が今描いている絵を指さし言う。




「だって…」


「練習だから間違っても大丈夫だろ。先生もそれを考えて言ったんじゃない?」




戸惑う旭奈に俺は言うと旭奈はちらっと前で真剣に作業をしている先生に視線を向けた。




「そっか」




俺の言葉を訊いて旭奈は先生に言われた言葉を思い出していた。


それに少し、悔しくなる。




「……塗ってみようかな」




言わなければよかった。



旭奈のさっきまでの憂鬱そうな表情から明るい表情になったのを見て子供じみたことを思う。




「……うん。塗りなよ」




だけど、そうやって強がって、自分の想いを見せないようにする。



そんなことも、三年も続けていれば嫌でも慣れてしまう。

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