第9話

相変わらず今日も沢山の音が聞こえてくる。


窓から入ってくる風が気持ちいい。



俺は風に当たりながら白いキャンバスの上に鉛筆を滑らす。




「今からコンクールの絵、描くの?」




キャンバスに向かって鉛筆を走らせている俺を見てさっきまで拗ねていた旭奈は訊いた。




「まあな」


「ふーん」




俺の相変わらずな短い返事に旭奈は興味があるのか無いのか分からない相槌を打つ。


そして、目線を俺から自身の机に戻した。




「さっきの絵、塗らないのか?」




ちらっと目をそちらに向けて訊く。




「祐人もそんなこと言う?」




笑いながら言う旭奈は新しい画用紙の上にまた、何かを描いている。



よくそんなに速くアイデアが浮かぶものだ。


しかし、それ程旭奈は絵を描くことが好きなのだ。


色が分からなくなっても絵を描くことが好きだから、描き続ける。


だから先生も俺も、こんなに必死になるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る