第3話

そんな彼女が可愛くて、俺の頬はつい緩む。


それを誰にも気づかれないように俺は何冊目か分からないキャンパスノートへまた顔を向ける。



その距離感が俺にとってはとても大切で心地よくて、もどかしかった。




がらっ、と二人だけの空間だった美術室のドアが開いた。




「先生!遅いよー!」




入ってきた人を見るなり、旭奈はそちらへ向かって行った。




「ごめんね。突然会議が入っちゃって」




眉をハの字にさせて申し訳なさそうに言う彼はこの学校の美術の先生であり、美術部の顧問だ。



そして、旭奈の好きな人でもある。



本人からそのことを直接聞いたわけではないが、三年間も見てきているのだ。


好きな人の好きな人なんて、分からない訳がない。

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