第2話
放課後の美術室。
そこは俺と彼女のたった二人だけの部員が“白”に向かって絵を描いている空間。
静かな二人だけの空間にはいつも鉛筆と紙の擦れる音がするだけ。
ただ、今の季節は真夏で蝉が煩いほど、鳴いている。
鬱陶しいと思いながらも前髪を纏め、俺は暇さえあればそれを耳に入れながら羅線の上に彼女を描く。
「祐人、またノート広げて…一体何を描いてるの?」
机一つ分挟んで旭奈は訊く。
その距離は近づくこともなければ、離れることもない。
三年間ずっと、変わらない。
俺は羅線上の動かない彼女から、いつものように机一つ分向こうで不思議そうにこちらを見ている彼女に目を向けた。そして、
「秘密」
彼女の言葉に一言答えれば、教えてくれてもいいのに、と頬を膨らます。
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