第27話

「でも、妬けちゃうな」


「え?」


「アタシとの約束放っておいてまで仲良くしてるなんて」




その言葉に少し期待するがきっとおーちゃんの事だ。



“好きな人が”ではなく“仲のいい後輩が”男友達と仲良くしていて妬けているという意味だ。


期待したっていい事なんてないんだ。




「約束放ったらかしにしたことは謝るけど、妬くほどじゃないでしょ」




笑って言えば、妬くほどよ、とおーちゃんは言う。



それに期待はしないと言い聞かせるのにどうしても期待をしてしまう。


本当どうしようもない。




「好きでもないのにそんな事言うなんておーちゃんは本当にずるいね」


「えぇ?どういうこと?碧ちゃんの事は好きよ?」


「あはは、ありがとー」




笑って言えばおーちゃんは首を傾げて私を見ている。




「でも、おーちゃんもクラスの人と仲いいじゃん」




教室移動でおーちゃんを廊下で見かける度に友達と楽し気に話しているのを見て、毎回羨ましく思っている。


きっと目の前にいる彼はそんな事を思っているなんて微塵も考えていないんだろうな。




「まあ、そうね。仲はいいかも」


「ふうん」


「皆良い人だからね」


「確かに。おーちゃんも含めて良い人ばっかりだよね」




もぐもぐ、とおにぎりを食べれば、ありがとう、と嬉しそうに言った。



やっぱりこの関係は壊したくないな。


そう思う私は意気地なしだ。

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