第9話

「でも、本当勿体ないというか、なんというか」




言い淀んでいる汐里に首を傾げる。




「おーちゃんが?」


「橘さんも碧もだよ。二人ともなんか、こう、惜しいよね」




惜しいってどういう意味だ。


おーちゃんがオネエで惜しいということなんだろうか。


なんて失礼な話だろうか。




「おーちゃんはオネエでもかっこよくて良い人だから」




少し怒ったように言えば、汐里は少し目を見開き小さく笑った。




「そんな事は知ってるよ」




私はそう言うことを言ってるんじゃないんだけどな、汐里は言ってビーカーに試薬を入れた。




***




私は彼に助けられた翌週、その彼が同じ学校の生徒だということを知った。


それは廊下で偶々見かけたからである。



そこから情報収集の日々が始まった。



と言っても彼はこの学校では有名人だったらしく情報収集を始めて三日で、名前は橘旺太郎、身長は180㎝、学年は私より一つ上で勉強は常に学年トップだけど運動は並。オネエだということまで分かってしまった。



そして、どうしても彼と接点が持ちたかった私は彼の教室に押し掛けたのだ。

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