彼に近づくきっかけ

第8話

「碧ってなんで橘さんの事好きなの?」




化学の時間。我が親友である汐里が実験中にそんなことを訊いた。




「なんでって…なんでだろうね」




試験管を手に取りながら首を傾げてとぼけてみる。




「最初はオネエって知らなかったんでしょ?」


「まあ、うん。顔めっちゃ好みって思ってた」


「オネエって知っても好きとか凄いよね。私なら無理かも」


「訊いた時の衝撃は凄かったけどね」




それと同時にこの恋は報われないと悟った。



だって、オネエってことは男の人が好きって事でしょ?


もう無理じゃないか。


ただでさえそこら辺の男からも好かれない私が好かれるわけない。



まさに負け戦である。




「碧、可愛いけどサバサバしてるからなあ」




諦めていれば汐里はとどめの一言を軽く放った。


それが無性に腹が立って、うるさい、と吐き捨てれば汐里は楽し気に笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る