うちの世界では便所の神が一番上なんです ~便所の神の加護を受けた聖女、略して便女~

上殻 点景

第1話

そこは次元世界。


普通の世界と違って、幾多の世界が重なりあって、荘在する場所。


当然、世界同士はぶつかったり、離れたりすることがあります。


そして中には世界を越えて、悪を働く者も。


「おらァ、聖女よケツをだせェッ」


先に言っておきますが、決して雑なエ〇同人の導入ではありません。


次元を超えて、世界の宝を奪おうとする悪人────次元盗賊が教会にやってきただけのお話です。


暗闇に潜んで、教会を狙うあたり、かなり手慣れた者の様です。


「ですが、私はお尻を差し出すほど、弱くはありません」


そう返すは白き衣をまといし、女性。


聖女と呼ばれた彼女は、教会のステンドグラス下、優雅にほほ笑みます。


「おいおい、たった聖女様一人でお出迎えかァ。泣けるねェ」

「そっちも一人で来るのは信託で分かっていましたから」


「そりゃあ、聖女の聖痕だぜ。独り占めしたいってもんよ」

「全く次元盗賊らしい、邪な考えですね」


神の寵愛を受けし者────名付けて、聖女。


彼女らは寵愛の印“聖痕”を、神ともっとも近しい位置に受けるという。


例えば、健脚の象徴であるなら足。豊満の象徴であるなら、胸。美の象徴であるなら、顔。


といった具合だ。


「おいおい、クソの神に愛された女がなんか言ってるぜェ」

「クソの神ではありません! 便器の神ですっ!!」


なら便器の神ならば?


「下劣な台詞そして我が神の侮辱……万死に値する行為です」

「だから、お前に何が出来るってんだァ」


「貴方達の旅を終わらすことができます────聖痕起動」


起動するは両愛の証。光り輝くは、お尻。


淡く、白く、端麗に。一切の闇を許さないが如く、輝く。


「け、ケツが白く輝いている」

「そうです。これこそが我が神の寵愛」


本来は極彩色である魔力は、幾重にも束ねられ、白色となります。


「馬鹿な、辺境世界の聖女がこれほどの魔力を……」

「知ってるでしょ、神の力は世界の信仰心で決まる」


聖女は光り輝くケツを、盗賊に向け、宣言します。


「────水洗トイレ普及率100%の我が世界を舐めないでいただきたい」


キュ。聖女のヒール音が鳴り響き、放たれるは白き魔力の洪水。


その濁流は一切の悪を許すことなく、次元の彼方へと押し流していくのであった。


「お、覚えていろよッ、クソ聖女ッ!!」

「クソ聖女ではありません、音姫です」


濁流にのまれながらも、必死で抵抗する次元盗賊の声。


「音姫ェ、今度は仲間を連れてきて襲って────…」


ですが、神の力の前ではそれも無力だったようです。


そうして一人になった教会で聖女はポツンと呟きます。


「盗賊のお仲間ですか……いいですよ、何人でもかかってきてください」


カンカンとヒールを鳴らし、また新しい信者を見つけたような笑みを浮かべる聖女。


「だって私────世界で最強の聖女ですから」

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うちの世界では便所の神が一番上なんです ~便所の神の加護を受けた聖女、略して便女~ 上殻 点景 @Kagome_20off

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