第8話 質屋

もらったハイポーションとやらを振りながら道を歩く。

おっさんの血が混ざった水とは思えないもので、揺れるとキラキラと赤のグラデーションが綺麗だ。

もらったものを捨てるのは貧乏性なのか気が引けるがこれを持っておくのはなんだか嫌だ。

結局保留だ。

こんなことより考えなければいけないことが山ほどある。

まず冒険者ギルドにはしばらく近づけないと言うこと。

あれだけ大きな騒ぎを起こしてしまった。

まず2人の男たちは血眼で私たちを探しているだろう。

次見つかれば体を触られるどころでは済まない。

またギルドも騒ぎを起こした私たちのことを快くは思っていない。

もしかしたら冒険者ギルドのへの加入を断られるかもしれない。

最悪なのが冒険者ギルドが今回の騒ぎを特別視していなかったとしても

冒険者ギルドに入ることはできないと言うこと。

お金がないのだ。

冒険者ギルドへの加入は銅貨30枚の頭金が必要。

今手持ちは5枚。これが私の全財産だ。

親に借りることもできるが聖騎士見習いをやめ、現在ニート生活中。

親不孝道まっしぐらなので流石にこれ以上迷惑はかけたくない。


とはいえどうしたものか。

生活するにはお金がいる。

お金を稼ぐには冒険者にならないといけない。

冒険者になるにはお金がいる・・・・

詰んだのか。

聖騎士諦めるの早すぎたかもしれない。

聖騎士になってお給金が出るようになってから辞めれば良かった。

と言うかお金がいることぐらい調べれば良かった。

なんで私はこう無鉄砲なんだろう。

自分のバカさ加減に辟易する。

人を助けるどころか自分が助けられる立場だって言うことに気が付いてすらいなかった。


ため息をつきながら道を歩いているとある看板が目に止まった。

質屋。

腰につけている短剣を撫でる。

聖騎士見習いになった時神殿によって授けられた剣。

本来なら見習いをやめたので返す必要があるのかもしれないが個人のものとして所持を認められていたので結局持ったままだ。

別に魔法がかかっているわけでもなく素材がいいわけでもないただの短剣なので

大金になると言うわけではないがこれを売れば幾らかの金にはなると思う。

短剣を売って銅貨30枚程度になればとりあえず冒険者になることはできる。

冒険者になり際すれば依頼を受けてお金を稼ぐことができるようにはなる。

それなら売るのではなく担保としてお金を借りるのが良いだろうか。

短剣は一応聖騎士見習いになる時人のためとなることを誓いとして授かったもの。

他の人から見ればただの短剣だがその所有者からすればとても大切なものだ。

じゃあそれを売ろうとする私はどう言う奴なのか。

白い目で見られるような気もするが・・・・。


まあとりあえず値段を聞いてから決めるのが良いかもしれない。

担保として銅貨30枚が借りられるならそれでよし。

借りられないんだったら売ってしまうか他の手段でお金を稼ぐ方法を考えなくてはいけない。

うんうんと唸りながら防犯対策なのか冒険者ギルドよりもかなり厚手となっている

ドアを押し開けた。

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