第5話 冒険者に転職

冒険者ギルドのドアに手をかけて押し、中へと入る。

中の部屋は思ったよりも薄暗い。

魔法によって作られた灯りなのか、ほのかなオレンジ色の発光をしている

シャンデリアがあるがろうそくや火の姿は見えない。

目を慣らせつつ奥へと進む。

冒険者ギルドは酒場と併設されているがまだ昼前ということもあり

酒を飲んでいる人は少ない。ただ昨晩飲みすぎたのか床で潰れてしまっているものは何人かいるようだ。

朝方には取り尽くされてしまう依頼が張り出されるのであろう大きめのボードの横に受付があった。

何をすればいいのかよくわからないのでとりあえず受付の女性に話しかける。

「あのすみません。冒険者になりたいんですけど・・・」

「冒険者ギルドへの加入ですね?氏名と年齢を文字で書くことはできますか?」

「できます」

「ではこちらの紙にご記入ください」

手渡された黄色味がかった紙に氏名と年齢を拙い文字で書き込む。

聖騎士見習いとして一通りの文字の読み書きを学んだけど

読むのはともかく書くのはどうにも苦手だった。

「シャルロット様ですね。受領いたしました。ではギルド加入のための頭金のお支払いをお願いたします」

「頭金ですか?」

「はい。冒険者になるとランクに応じてプレートというものをお渡しします。加入されたばかりの方はアイアンプレートとなるのですが、一番下のグレードとはいえかなり質の良い鉄を使用したものになりますので換金目的のギルド加入を考えられる方がいらっしゃいます。それを防ぐためにアイアンプレートの代金をギルド加入金として支払っていただき次のランクのブロンズになった際お返しするという方式をとっています。」

「え・・・ちなみにおいくらなんですか?」

「銅貨30枚となります」

「さんじゅっ・・!?あのすみません!手持ちに今お金がないのですけど・・待ってもらうことってできますか?」

「大丈夫ですよ。では書類はこちらで保管しておきますので用意できましたら私に

お声がけください」

「ありがとうございます!」

まさかのお金が必要・・・

しかも銅貨30枚。

銅貨4枚あれば1日は暮らせるとなると・・

えーっと?何日分?わかんないけど、いっぱい必要なのだというのがわかる。

軽い財布を開く必要はない。

冒険者になったとしてお金が返ってくるブロンズになるのにどのくらい時間がかかるかもわからないし親に借りることも難しいだろう。

どうしたもんか・・

受付を背に歩きながら考えていると肩を強めに叩かれた。

「金がないなら俺たちが貸してやろうか?」

振り返ると2人の男が立っていた。

どちらも戦士風の格好をしており片方の顔にはモンスターにやられたのか

大きめの傷が入っている。よく言えば歴戦の風貌だが悪く言えば小汚い。

実際近づかれると臭い。

「金がないなら俺たちが貸してやるよ。その代わり俺たちとパーティ組んで

しばらくは一緒に仕事をしてもらうがな」

そう言いながら傷の男が馴れ馴れしく肩を回してくる。

とはなんだろうか。

彼らの装備にそれぞれ目立つようについているプレードはシルバーの輝きをしている。つまりは先輩だ。

普通に考えれば先行き不安な冒険者としてのスタートを生き残った先輩方と組めるというのは逆にこちらがお金を払わないといけないぐらいありがたいことだ。

私は聖騎士見習い。

能力も未熟で装備も聖騎士見習いの時神殿からもらった短めの剣だけで貧相だ。

お金を貸してまでパーティに入れたいとは普通思わない。

彼らのいやらしい目線から考えると間違いなくそっち方面のもさせられることだろう。

「いやあほんと大丈夫なんでまた今度の機会に・・」

「釣れねえじゃなねぇえか。せっかく貸してやるって言ってんだ受け取れよ」

どうにか逃げようと体を動かすが男たちは逃すまいと

体を寄せ力を込めてくる。

助けてもらおうと受付の人に目線を送るも、暴力を匂わせる彼らと問題になりたくないのか努めてこちらを無視してくる。

どうしよう。

涙が出そうになる。

体を触られないように頑張って捩りながら男たちの包囲網を抜け出そうとしていた時

カンッと頭上で大きな音がなった。

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