第4話 新しき旅路
人を守るべき聖騎士が税を納めることができなかったという理由で
荒れ果てた土地にある村の村長を処刑した。
憧れた聖騎士は神に従い、百鬼羅刹から人々を守護する。
そんな人間になりたかった。
でも実際は違った。
聖騎士は端的にいえば武力だ。
職業的に訓練を納め戦う術を心得ている。
加えて同じ重さの金より高い値段のつく魔法のかかった鎧と剣をもち
人によっては珍しい回復系の魔法・奇跡を使うことができる。
下級のモンスターであれば同数以下であれば相手にならない。
モンスターや盗賊の脅威に晒される人々にとっては英雄だ。
けど彼らは英雄とは呼ばれない。
献金が必要なのだ。
彼は聖騎士は神殿へと属している。
いかに神は人を助けるといえど生きるためには金や飯が必要。
無償で人々を助けるようになれば神殿の運営は難しくなり
結果として聖騎士の訓練や装備の充実は失われる。
しかし弱い立場の人々を守らない聖騎士の育成をしたり装備を整えたりする必要はあるのだろうか。
神殿自体は病気や怪我の治療をすることができる神官もいるため
必要だろうが街に引き篭もる聖騎士は必要なのだろうか。
答えは必要である。だ。
なぜならば聖騎士は街を守るという役目を持っているからだ。
宗教色の強いこの都市では衛兵の代わりに聖騎士が街を守っている。
加えて宗教戦争というものがある。
要するに国家間の戦争のための兵士なのだ。
聖騎士は人を守るにあらず。
けど専業兵士、国や街を守る兵士として必要な存在だから
弱きを助ける勇ましい存在としてプロパガンダを流すことで
その数を確保している。
そんなプロパガンダに憧れ聖騎士を志望し見習いとなったが
大を守るため小を切り捨てる実情に耐えられなかった。
規則によって禁じられている実家への帰宅をし、
翌日神殿に帰り聖騎士見習いをやめることを教育担当の聖騎士に告げた。
聖騎士見習いをやめるというのはかなり珍しいらしく、
恥知らずや恩知らずなどさまざまな言葉で叱責された。
自分の担当の見習いが辞めると教育担当の評価にも影響があるのか
などと思いながら受け止めていたが一応芯を食った言葉もあった。
周りからの目に関することだ。
この街は何度も言うように宗教色が濃い街だ。
そんな中聖騎士志望を諦めた人間が周りの人からどう見られるのかと言うことだ。
異教徒に対する扱いとまではいかないがそれでも
軽蔑するような目が向けられるかもしれない。
聖騎士見習いをやめて他の職に就こうとしてもその事実が足を引っ張ることだろう。
しかしもう決めたのだ。
「私を思っての言葉ありがとうございます。ですが私は冒険者になりたいのです!」
「冒険者?・・」
冒険者は余程の犯罪者でなければなることができ、元聖騎士見習いであっても
力さえあれば評価される職業だ。
そして宗教色の濃いこの街にとどまることなくさまざまな場所に行くことができるので周りの目にも悩まされることもない。
最後に冒険者は基本的に自主性が保たれている。
ドラゴンを倒そうが薬草を採取しようが弱きものを助けようが
それが周囲に被害をもたらすものでなければ容認される。
「冒険者など金の亡者がやることだ!!そこまでして金が欲しいのか!この下衆が!!」
「すみません。でももう決めたことなので。今までありがとうございました」
一礼して去ろうとすると聖騎士が肩を掴もうとしてきた。
身をかがめることで手をすり抜けそのまま走って神殿を出た。
そして冒険者ギルドの酒場前に立つ今に至る。
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