1.異変

 私がを感じたのは二人目の彼と付き合っていた時だった。


 一人目の彼は、何ていうか、嵐のように去って行った。


 付き合って半年。寝た回数は六回。最初はあった甘い言葉やお姫様抱っこは、回を重ねるたびに雑になっていった。って、言うほど長い付き合いではなかったんだけど。


 たったの半年間だった。彼は私の肌に飽きたらしく、あっという間に他の女を作って去って行った。たったの六回しか寝ていないのに、飽きたってどういう事?


 そんな、私の初めてを捧げたクソ彼氏を忘れさせてくれたのは、二人目の彼だった。


 彼は、一人目の彼と面識があった。私とも数年前から面識があった。「あいつは昔から飽きっぽい奴だから……」と言っていたが、それならそうとお付き合いを止めて欲しかった。


 それでも、二人目の彼は傷付いた私を優しく慰めてくれて、いつしか私は彼に恋心を抱くようになり、結ばれた。


 彼は少々小うるさい所がある人間だったけど、それを除けばなかなかハイスペな部類に入る人だった。


 一流大学を出て、一流企業に就職。前途洋洋な若者、それが彼だった。


 私が体調を崩して一ヶ月入院した時、彼は仕事帰りに毎日のようにお見舞いに来てくれた。彼の家と私が入院していた病院は逆方向なのに、それでも毎日毎日私の様子を見に来てくれたのだ。


 その頃からだった。私の体重が増え始めたのだ。


 そんなに食べているはずはないのに、何故?


 最初は一週間に一キロも増えてしまった。退院したお祝いにピザを食べたからかしら? 私は太りにくい体質だったはずなのに何故?


 疑問に思ったが、だと思って食事制限や運動はしなかった。


 それからしばらく、普通に暮らしていたら、みるみる内にスカートのウエストがきつくなってきた。体重を測ったら、四キロ増えていた。由々しき事態だ。


 このまま行ったら五十キロ台になってしまう。人生で一度も五十キロを超えた事なんて無い。


 私は焦って軽いランニングをするようになった。


 なのに、体重は増え続け、三カ月後には五十三キロになってしまっていた。


「こんなに太るだなんて、君は詐欺だ」


 あんなに優しかった彼に、そんな言葉を吐かれた。彼は心底汚い物でも見るかのような目で私にそう言い放ったのだ。


 私はその言葉にすっかりショックを覚え、そして自分の中で彼への想いが冷めていくのを感じた。


 たかだか八キロ太ったくらいで、何よ。そりゃ、過去最高体重だけども。


 それで結局私達は別れた。


 不思議な事に、彼と別れたら一カ月で私の体重は元の四十五キロに戻った。


 彼としていた外食が良くなかったのかしら?


 私はそれくらい軽く考えていた。それが悲劇の幕開けだとも思わずに。

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