愛の重さ
無雲律人
プロローグ
何故、私はこんなに太ってしまったのだろう。
二十歳の時は四十五キロだった。身長は百六十五センチ。スレンダーな身体は私の自慢だった。
なのに、今は百二十キロもある。信じられないかもしれないけど、人間は十五年でそれほどまで肥える事が出来るのだ。
暴飲暴食をしているわけではない。お酒は飲まない。食事だって気を付けていて、量だってそんなに食べていない。太るのを気にしてお菓子類は控えているし、甘いものだって我慢している。なのに私はどんどんと太って行く……。
鏡を見るのが嫌だ。お風呂場の鏡に映る私はまるでクリーチャーのようにぼよんぼよんとしている。
昔はスラッとした足が自慢だった。でも今は肉が付きまくっていて短足にすら見える。
あんなに引き締まっていたフェイスラインだって、今はもう見る影が無い。
だらしなく引き締まらない二重顎、中年に差し掛かってたるんできた頬。こうなるとほうれい線まで目立ってきたような気がしてしまう。
私はまだ三十五歳なのだ。女盛りなのだ。なのに、好きな服を着る事も出来ない。
夫はそんな私を、大きなサイズ専門のショップに連れて行こうとする。でも、私は外出する事が怖くてたまらない。みんながみんな私を白い目で見ているような気がする。
何故?
何故私はこんなに太っているの?
私が何か悪い事をした?
それでも夫は私を愛してくれる。いつも彼は優しくて、思いやりがあって、心も身体も私を愛してくれる。
でも私は裸体を晒す事に抵抗を感じる。でも、彼はそれでも構わないと微笑む。
彼の愛が重い……。
愛が重いと思うたびに体重が増えていく気がする。気のせいだろうか? いや、これは多分気のせいじゃない。
だって、私は愛されるたびに体重を増やしていったんだから──。
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