5 検証~死~

 義姉が見つかったのは、土砂崩れの発生から10日以上経ってからのことでした。義姉の他にも犠牲になった人がいて、遺体が何十人か公民館に並べられました。


 兄が言うには、義姉はお腹が大きかったからすぐにわかったとのことでした。しかし遺体の損傷は激しく、自分の妻なのに見たことを後悔するものであったとも語っていました。


 私は、義姉が死んでも悲しいとは思いませんでした。何故なら、義姉は私をずっと憎んでいたからです。しかし神妙な顔つきをしなければまた両親から叱られると思い、私は義姉の葬儀の間は泣く振りをしていました。


 それから、兄は私と一緒に実家に戻って来ました。兄は義姉の位牌を常に抱いていました。


「そんなことをしても、お義姉さんは帰ってこないよ」

「わかってる」


 兄は私の忠告も聞きませんでした。テレビ局がたくさん我が家に取材に訪れましたが、両親は何故か怒って一切取材を受けませんでした。そんなに話したくないなら私が代わりに話そうか、と提案するとやはり両親は怒ります。


 何故私は死ななかったのでしょうか。

 その理由は、意外なところから発覚しました。


***


 私が自室の荷物を整理していると、急に兄が怒鳴り込んできました。そして訳のわからないことを言いながら、私を殴り始めました。悲しみのあまり兄がおかしくなったと思い、私は両親に助けを求めました。


「こいつが、こいつのせいで……!」


 兄はずっと私を指さして「私のせいで義姉は死んだ」と言い続けました。義姉が死んだのは土砂崩れに巻き込まれたからであって、私のせいではありません。兄の不当な言いがかりに腹を立てていると、その間に兄の話を聞いた両親が真っ青になっていました。


「物置にあったひな人形を埋めたという話は本当か?」

「うん」


 私は嘘をつく理由もないので頷くと、父から一発平手打ちを食らいました。


「お前のせいで……!」


 それから、父は私たちを連れて居間へ移動しました。母はずっと泣いて話になりません。どこかから箱を持ってきた父と、泣いている母と兄がおりました。


「これから話すことは、できれば死ぬまで黙っておくつもりだった。しかし、こういう事態になってしまっては話さないわけにもいかないだろう」


 父が箱の中から写真を取り出しました。それを見て、私と兄は驚きました。


 3歳くらいの幼い義姉が、母親と思われる女性の腕に抱かれていました。

 その母親と思われる女性は、どう見ても私と兄の母で間違いありませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る