4 検証~埋める~
実家の物置から、兄に手伝ってもらい私は古い七段飾りのひな人形のセットを引っ張り出しました。
「すごい埃だな、何年出してなかったんだ?」
「さあ。出してみましょう」
私と兄はひな人形を箱から出しました。飾るものでもないので、出した人形は地面にみんな並べました。箱に入ってビニールを被っていた人形は思いのほか綺麗で、今から飾ると言っても差し支えのないものでした。
「本当にこれを埋めるのか?」
「どうせ使わないでしょう?」
使わないものをしまっておくだけなど不経済だと私は思うのですが、兄はそう思わないようです。
「昔からお前は変わってるものな。今更何も言わないよ」
兄は私と一緒に、家の裏に大きな穴を掘りました。兄と何かをしているときが、私は昔から好きでした。
「どうせ埋めるなら、話の通りに壊してからにしましょう」
「おいおい、おひな様を壊すって言うのか?」
別に人形を壊したからと言って、どうせすぐ死ぬわけではないのですから怖いものなどありません。サイトウの話に出てきたサキのように目の前に死が迫ってきたら怖いかもしれませんが、ひな人形の首を折るだけならたやすいことです。
私はひな人形たちの首を全部折りました。男雛に女雛、三人官女に五人囃子、右大臣左大臣に三人仕丁。人形があったから私は無事に育ったわけではありません。人形に恩義を感じるわけがないでしょう。
もし呪いというものがあるなら、私は死にたいと思っているので死ねればいいと思います。そう言っても呪いなんかないと思うので、私は特に女雛を念入りに壊しました。スコップで何度も何度も打ち付けて破壊し、他の人形たちと一緒に穴の中に放り捨てて土をかけました。まるでごみを捨てている気分でした。
「……気は済んだか?」
「うん。ありがとう」
兄は私に笑いかけました。とても優しい笑みでした。
兄だけが私の味方でした。
これで私はひな人形の呪いにかかりました。
どうせ私が死んでも誰も困りません。
しかし、私はいつまで経っても死にませんでした。
***
その年の夏、大雨が降りました。そして、村を土砂崩れが襲いました。
幸い、我が家は難を逃れました。
しかし、土砂は兄の家を直撃しました。
兄は消防団の見回りで家にいませんでした。
避難注意情報が出たからと、両親が家にひとりでいる義姉を迎えに行く途中のことでした。
それから、義姉と連絡がとれなくなりました。
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