3 検証~前提~
先に私の話をしましょう。
何故その話を検証しようとしたかと言いますと、端的に言えば私が死にたいと思ったからです。結婚もできず、仕事もろくに出来ずにこの度派遣会社から契約を打ち切りにされた私は生きているのが申し訳なくなりました。しかし、自死というのは大変おそろしく、私には到底達成できるものとは思えませんでした。
そこで、どうせ死ぬのなら周りを巻き込んで死にたいと思いました。そのとき思い出したのがサイトウのおひな様の話でした。ただの迷信だとばかり思い込んでいましたが、もしこの迷信に実効性があるのであれば私は死ぬことになります。
この迷信を検証するため、私は実家へ戻りました。私の実家は山間部にありました。実家の近所には兄夫婦が家を建てて住んでおり、年老いた両親を支えていました。
父と母は私を軽蔑していました。思えば、幼い頃から両親の愛情というものを受けた記憶がありません。そんな私が死ぬのですから、両親はさぞ喜ぶことでしょう。
しかし、両親に計画の内容を話すことはできません。そこで私は、兄に話をすることにしました。昔から兄だけは私の味方でした。私は兄の家に向かいました。
「おひな様を埋める、だって?」
「そう。もし私が死んだら、おひな様のせいだと思ってね」
「そんなバカな」
兄は私の悪ふざけだと思ったのか、一笑に付しました。
「だから家の物置から、おひな様を出すのを手伝って」
「わかったよ。そのくらいなら手伝ってやる」
玄関先で談笑する私と兄を見て、庭から兄の妻がやってきました。私にとって義姉にあたります。昔から義姉は兄のことが大好きでした。義姉の方が兄より年上なのですが、兄に執着しているようで少し怖いと思っていました。
「今からちょっと出かけてくる、昼過ぎには帰る」
「そう、わかった」
義姉はこっそり私を睨み付けました。昔から、私はこの人に嫌われていました。その昔は川に追い立てられて棒で叩かれたこともありました。それを兄に話すともっと酷い目に合わせるというので私は素直に黙っていました。兄の前になると義姉は私に対してとても優しいふりをします。私はこれを「嫉妬」というものだと理解していました。
「お義姉さん、大丈夫なの?」
「ああ、予定日は7月だ。夏生まれになるぞ」
このたび待望の初孫が生まれるということで、うちの両親も楽しみにしているところでした。それで義姉も精神が不安定になっているのでしょう。ますます私の居場所はなく、私は死ぬべきであると検証を続けることにしました。
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