第19話


2163年 1月3日

  

みんなの目がどうすれば生きたようになるのかずっと考えていた。


極論からいえば、ある程度の改革、戦争が必要だと思う。戦争をすれば、一時の苦しみのうちから新たな希望が生まれる。


社会秩序を新しく塗り替え創造することができ、そのための輝きが生まれる。みんなの目に希望の光が宿るはずだ。


1960年代の映像を見た。それは第二次世界大戦後の成長過程だった。


環境は整っていなかったけれど、映像の中にいる人の目は輝いている。


みんなにああなってほしいから、私はこれから全力で、戦争を引き起こす方法を考えようと思う。


仮に核が使われても日本は地下に住んでいるから安全とされている。


ならばまずは地下日本を滅ぼす方法を考えなくては。そうして人々を助けるのだ。

これは、私の人生の中でとても長い計画になる。


世界に暗闇が訪れ、そこに光が差した時こそ、きらめきが生まれる。これからは計画を実現させ、達成させることを目標としよう。


2163年 4月9日


計画はまだ第一段階。今日は個人的な話を書く。高校である女の子と友達になった。その子はあの「クズモトユウキ」の姉だった。葛本美砂という。今まで同じ高校にいたことに気付かなかった。  


なんと美しい偶然だろうか。大切にしなくては。


2163年 7月18日 


美砂と親密な仲になりつつある。


今日は歳の離れた弟が行方不明のまま帰ってこないと打ち明けてくれた。


弟がいなくなっていることに酷く悩んでいるようだ。死体を掘り返しに行って、ユウキは今幸せなのだと説明しようかと考えた。


けれど、この国の法律では人を殺すと捕まってしまう。


だから言ってはいけないのだ。救いにつながるのに、なぜいけないのだろう。


ユウキが可哀相だ。もう骨になっているけれど、あとで綺麗に手をくわえようか。


友達のことは最優先だ。卒業までには美砂の悩みを解き放とう。美砂が幸せになるために、美砂を弟のいるところに連れて行かなければ。それができるのは私だけだ。


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