第13話
2型の情報は、やはり地上の人々にはあまり入っていないらしい。
私は説明をした。
「なら親と子で生き別れている人たちはどうなるの。ここにはそういう人たちがいっぱいいる。私には、親も弟ももういないけど」
「地上で死んだことが確認されれば、アンドロイドを作ることはできる。ただいくつか面倒な条件があって、2型を作れるのは過去6年以内に脳を機械にコピーしている人たちだけ」
美砂は納得したように溜息をついた。
「ああ。奏のお父さんはアンドロイド工学者だもんね。奏が脳をデータ化していたのは当然か」
しばらく他愛のない話をしてから、美砂はまじまじと私を見つめた。
「アンドロイドとして蘇って、地下から出てきてなにをしているの」
「最初は父の命令で地下から出てきたのだけれど……」
「今は?」
「わからない」
そう答えた。なにかできることをしたかった。それ以上に、地上に出ることによって奏がとるであろう行動を、はっきりと確認したかった。
父は警告音を気にするなと言ったが、いくら過去を思い出しても、奏の人物像がまだうまくつかめない。奏であるはずのカナデがこれでは、やっぱり欠陥のような気がしてくるのだ。
「ま、会えてよかった。もう帰るね。最近体調悪くて、起きていられる時間が少ないんだ」
そうだ。ここにいるということは美砂も被爆している。長くないのだ。胸が痛んだ。
「困っていることない?」
「仮設風呂の回数増やしてほしい。週に3日じゃさっぱりしない」
美砂はそれだけ言った。爆発以降の辛かったと思われるできごとも、愚痴も、なにひとつ語ろうとはしなかった。
「わかった。伝えておく」
言うと美砂は力なく微笑み、去っていった。
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