第37話

おひな様をきらきらした瞳で見ていた璃桜が、ふと顔を上げる。

その澄んだ翡翠色の瞳は、何かを探して庭先を見つめた。

「?璃桜ちゃん。どうしたの・・・・・・」

言いかけたさゆと美花穂にも、聞こえた。

エクストレイルのエンジン音だ。

「・・・・・・ハクっ」

立ち上がった美花穂はおひな様の道具が膝から落ちて転がるのもかまわず玄関に向かう。

璃桜もつられてトテトテと走った。

さゆは、とっさに動けず呆然とする。

え?え?だ、だって。あ、明日帰って来るって・・・・・・。

どうしよう。ちらし寿司だって作ってないし。

おひな様だって出してる途中でこんなに散らかっちゃってる。

以前のさゆなら、迷わず凌の元に走って行っただろう。

だが、ぬくもりをわかちあったあの夜から、さゆの想いは変化した。かわいがってもらうことだけ考えていた頃とは違い、凌が帰る時には精一杯の暖かい場所を作っていたい、そう思うようになったのだ。

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