第35話

ほんとうに、さゆには感心してしまう。

こんなにぼーっとしていてとろい感じなのに、お金をかけないでちゃんと相手をもてなす事を考えつく。

そのとき、おなかの子供がくるん、と動いた。

美花穂はそっとおなかに手をあて、優しく話しかける。

「リトもおひな様が見たい?」

美花穂はおなかの赤ちゃんをlittleから取ってリト、と呼んでいた。

おひな様を手に取り、そっとおなかの前に見せる。

「見える?」

優しく穏やかな表情で語りかける美花穂は、とてもきれいだ。

さゆは不意にあまりに幸せで涙が出そうになった。

ほんの数ヶ月前まで、義父の恐怖に怯えていた毎日だったのに。

今は、美花穂と、璃桜と、三人で毎日穏やかに楽しく暮らしている。

狭いアパートだけれど、そんなこと全然問題ではない。

そして、大好きな凌ちゃんの帰りを待っているなんて。

こんな幸せなこと、ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る