第14話

「・・・・・・凌さんですか」

ため息と共に呟いたハクにさゆはふるふる、と首をふった。

「違うの、凌ちゃんじゃ・・・・・・」

凌を、悪者にしたくない。

だが、思いとは裏腹に再び涙があふれ出た。

ハクはそっと服の袖でさゆの涙をぬぐった。

「すいません。考えが足りませんでした。彼には、後で私がお願いしたと伝えますから」

「い、いいの!もう、もう・・・・・・平気だし」

ハクが頼んだと聞いたらますます凌は激昂するに決まっている。

さゆの必死な顔に、ハクは優しく笑った。

「わかりました。では、ここを片付けます。さゆさんには料理をお願いしていいですか?鴨の肉を用意したので・・・・・・ああ。でも、美花穂さんには。何か別な物を・・・・・・体調悪いみたいなので・・・・・・」

さゆはこくり、とうなずいて立ち上がった。部屋を出ようとして振り返る。

「あ!あの・・・・・・ハクさん。殴ってしまって、ごめんなさい」

ハクは一瞬なんのことかわからず、きょとん、と目を瞬いた。

ああ。凌が蟲になると宣言してさゆを怒らせた時か。

「気にしていません。私こそ。無神経なことを言いました。優しいさゆさんにそこまでさせたのが悪いんですよ。ここを片づけたら、すぐに台所も手伝いにいきますから。つきたてのお餅、おそば、さつまいもと栗なんかも鴨と交換で農家の方にわけてもらいましたよ」

ハクの笑顔は、さゆの冷えた気持ちを暖めてくれる。

こんなに。優しい男の人もいるんだ・・・・・・

さゆはきれいにさばいてあるおいしそうな鴨の肉を皿に並べながら、ため息を落とした。

私は。どうして、凌ちゃんをいつもいつも怒らせてしまうんだろう・・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る