第5話

だが、今回は前のようにいきなり殺そうとはしなかった。脅しをかけてきただけだ。脇差を持っていながら、使おうとはしなかったのだ。

おそらくさゆがいるから、心情が変化したのだろう。愛情を持ってくれる者がいれば、答えようとする。悲しませまいとする。

それは、他の者への優しさを育む。

まあそうは言っても凌の優しさの範囲はまだまだ狭いが。

昨夜の地面に突っ伏し嗚咽する凌の姿が脳裏に浮かんでくる。

ハクは目を閉じて深いため息をついた。

・・・・・・私には。どうしようもない・・・・・・

蔵を出ようとしたときに、ハクの視線の先に四角い立方体が映った。

碁笥の蓋を開けると、中にある黒と白の蛤で作られた碁石はつやつやと輝く。

遠い昔。

かぐや姫の育ての親である翁に、よく囲碁の相手をさせられたものだ。

・・・・・・懐かしいな

ハクは微笑むと蔵を出た。

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