第9話~若頭のけじめ~
俺の姿は海沢会の本家にいた。
藤沢の親分も、関係のない石原もやられた。
折角生き残った池上もやられ、俺は既にあの二人に対しては復讐心が燃え始めており、けじめを付けるために訪れたのだ。
俺はノックもせずに会長室のドアを開けた。
丁度、菊池と永野の姿があり、二人は何やらデスクの周りで密かに会話をしていた。
俺の姿に気づくと、菊池は目を見開きながらも俺の方を向いて
「お前、ノックぐらいしろよ」
俺はドアをゆっくりと閉めてから、菊池に近づいた。
「お前、俺に言ったことと、石原に言ったこと全くちげぇじゃねぇかよ」
菊池は鼻で笑ってから微笑み
「何を言ってるんだ」
「石原の襲撃も、お前が仕組んだのか?どうなんだ」
「それはしらねぇ。石原やられたのか」
「しらばっくれるんじゃねぇぞこの野郎」
「いいか。言葉の使い方に気を付けろよ。誰に向かってその口を利いてるんだ」
永野が間に入った。
こんな状況でよく間に入れるな。
流石に永野とあろうお方なら、空気は読めるとばかり思っていたのだが、そうではなかったみたいだ。
だが、これも永野の策略かもしれないと思い、俺は永野の顔をじっと見てから
「でも、今回の知恵は確かにお前らしいな」
「は?」
「菊池がこんな知恵を思いつくはずがない。お前、天才だな」
そう言うと、永野は鼻で笑ってから
「どうも」
俺は笑みを浮かべた。
これで永野の知恵で菊池が動いていたことが確実になった。
恐らく永野も油断をしているため、今の言葉で俺が確信を付けたことは想像していないのだろう。
俺は再び菊池の方を向く。
菊池は余裕そうにコーヒーを飲みながらも
「それで、お前は何しに来たんだ。ノックもせず、アポも取らないでいきなり来て」
俺は腰の中に入れていた拳銃を菊池に向けた。
菊池は目を見開きながらも
「お前、どういうつもりだ」
永野は大きな声で
「誰か!来てくれ」
「無駄だ」
「は?」
「全員やっておいた」
「お前・・・」
ここに来る前に既に止めようとする奴の腹に弾を撃ち込んだ。
中には俺と顔見知りの人間もいたのだが、俺は構わず撃ち殺した。
今、この二人にけじめを付けざるを得ない時に、情という言葉は一切必要ないのだ。
既に弾切れになったものは捨て、拳銃を持っていた奴の物を奪い、今この場所に立っている。
だからこそ、この場で止めるものは誰もいないのだ。
それを説明すると、二人は怯えた表情を浮かべながらも
「待て。いくら欲しい」
この期に及んで命乞いか。
菊池のせいでどれだけの人間が命を落として来たか。
それも関係のない者までも含まれている。
それを知らずに、のうのうとコーヒーを飲もうとする姿に、俺は呆れたのだ。
本当ならすぐにでも頭をぶち抜きたいのだが、やはり少しはこの恐怖を味わってほしいと思い、微笑みながらも
「お前の命で結構だよ」
「ちょっと待てよ。話しぐらい聞けよ」
「なんだ」
菊池は永野に目線を送ってから、永野はポケットから拳銃を取り出した。
俺はすぐに永野の足を撃ち込んだ。
本当ならすぐに心臓を撃ち抜いても良かったのだが、それには理由があり、永野に近づいてから
「どうしてすぐに殺さないか知ってるか?」
「な、なんだよ」
「それはな。今までお前の頭の中で描いた構図のせいで、色々な人が一瞬で死んでるんだよ。だから、お前にはその苦しみを味わってほしいなと思ってな」
「だったらさっさと殺せよ」
「それはしない」
「は?」
かなり痛がっている永野を傍に、俺はあえて菊池の方に向かってから
「会長。大川はけじめを付けさせてもらいます」
「けじめ?」
「はい。あなたの命と一緒に」
そう言って菊池の頭に一発撃ち込んだ。
菊池は椅子に座りながらも、息絶えている。
これで一人目のけじめは済んだ。
その光景を激痛を堪えながらも見ていた永野は
「お前、後で袋叩きにされるぞ」
「そんなの覚悟の上だよ」
永野は息を切らし、額から大量の汗を流しながらも俺の方を向いて
「どうするつもりだよ」
「生き残りたいか?」
「・・・あぁ・・・」
「そうか」
俺はそう言って落ちている永野の拳銃を拾い、グリップを向けて渡そうとした。
永野が手を差し伸べると、俺は拳銃の向きを変えて、頭に弾を撃ち抜いた。
そのまま倒れ込んで息絶えていた。
二人目のけじめが済んだのだ。
周りは血が飛んでいるところもあれば、血の海になっている箇所もある。
だが、これで一連の抗争は幕を閉じるだろう。
すると、ドアがゆっくりと開き、誰かが入ってきた。
「ありゃま。こんな無残にやっちゃったのね」
新しくこの会に赴任した有田だった。
何故この場所に来たのか。
俺は全く理解が追い付いてなかったが、有田は菊池の顔をまるで舐め回すかのように見てから
「この死体。良い顔してるねぇ」
「なんで来たんだよ」
「いいじゃない。こんな血の抗争なんか滅多にないんだからさ」
そう言って血の海を微笑みながらも見ている。
なんだか気味の悪さを覚えながらも
「そうか」
「それと、この件は上手く処理しておくから、そっちから誰か出してくれ」
「そいつが逮捕されて一件落着ということか?」
「そうだ。こっちは石原さんまで殺されてるから、示しがつかなくてよ。だから、そいつが勝手に起こしたことで上手く片付けておくから」
「なら頼む」
そう言ってその場を離れようとすると、有田が呼び止めて
「言っておくが、お前らのことを許しているわけじゃねぇぞ。ヤクザは社会のごみだ。それだけは覚えておけよ」
「分かっているよ。それじゃあな」
ドアを開けてそのまま部屋を後にしていった。
やはり、あの刑事はサイコパスの匂いがしていたが、そうであったか。
だが、一連の抗争にケリをつけたため、肩の荷が下りていた。
俺もそろそろヤクザの世界から足を洗うかと感じながらも、倒れている死体をかき分けながらも、本家を後にしていった。
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