第8話~若頭の復讐~
俺は今、芽久山組事務所の目の前にいる。
今回の藤沢組襲撃で生き残った舎弟の〈池上〉が運転する車の中で、俺は組長である芽久山が帰って来るのを待っていた。
もちろん、手元には拳銃を持っており、いつでも〈けじめ〉を付けられる覚悟で臨んでおり、藤沢と石原の復讐を遂げようと、目を瞑りながらも気持ちを整えていた。
すると池上が不安そうな表情を浮かべながらも、俺の方を向いて
「兄貴、本当にやるんですね」
「あぁ、親分の仇だ」
「でも、これでけじめが付くことになるんですかね」
「どういう意味だ」
「いや、確かに他の兄貴や、親分がやられてけじめを付くことは当然です。しかし、裏には菊池会長や永野の頭がいるんでしょ。芽久山組を襲うだけでけじめが付くのかなって」
「何不安になってるんだよ。もちろん、あの二人へのけじめもつけさせるさ」
「ならいいんですが」
本当の悪人はあの二人だ。
菊池の地位と永野の知恵で、今回の抗争は勃発した。
発端は俺が飯田組の萩田を殺したことだが、それでも裏で糸を操っていたのはあの二人だ。
確かに俺も言われてみれば、サイコパスの一人かもしれないが、ヤクザの世界は大体がそうだ。
自分の地位や生き残りをかけて、日々裏切り・騙し合うのだ。
俺はしばらく前を向きながらも
「いいか。芽久山が帰ってきたら、俺がまず突っ込む。そしたら後ろから撃ち始めてくれ。拳銃の使い方は分かるか?」
「えぇ、一度アメリカに行った際に射撃訓練を」
「お前アメリカに行ったのか?」
「はい。俺の知り合いに偽造パスポートを作る専門家がいて、それでアメリカにちょっとした仕事で」
「そうか」
確かにアメリカのマフィアとは深い繋がりを持っている。
アメリカで売りさばいている薬物を密輸して、日本で売りさばいたり、カジノのシマを一部流用してもらい、金稼ぎの一つして関係を持っているのだ。
「なぁ、池上」
「はい」
「もしどっちかが生き残ったら、この世界から足を洗おう」
「え?」
「俺はこの世界に疲れた。毎日が生き残ることばかり考えて、色々な箇所から振り回されて、最終的には命でけじめを付ける。こんな世界にいて何が楽しいんだ」
「確かにそうですね」
今回の抗争でよく分かった。
この世界はいかれてやがる。
確かにこの世界には凄く憧れを持っており、高校の先輩も何人かはヤクザになった人間もいて、俺は相当羨ましがった。
だからこそ、初めて藤沢組に入った当初は、凄く喜んだ。
これで強い者の一つに入ることが出来た。
しかし、時が経つにつれて、俺は若頭となり、若い衆の面倒も見なければならなくなり、色々と自分の時間を失っていった。
それに若い衆が犯罪を犯した際は、俺が藤沢の代わりに警察に謝罪に行く。
俺が憧れていた世界はこんなもんじゃなかった。
そう思うと、なんだかため息が出そうだったが、池上が
「俺も、同じ気持ちです」
「そうか」
「この抗争が終わって生き残ったら、俺も足を洗います」
「なぁ、池上はこの世界に入って何年たったんだ?」
「確か五年です」
「そうか・・・五年、無駄にしたな」
俺はそう言って微笑んだ。
すると池上が
「四年ですよ」
「は?」
「一年間は確かに楽しくて。その一年は全然無駄じゃないです」
「そうか」
確かに俺も最初の一年は毎日が楽しかったなと思い出しながらも、ただ目線を前に微笑んでいると、誰かがノックして来た。
ドア横にはスーツ姿の男が立っており、胸には警視庁のバッチが付いている。
恐らくマル暴だろうと思いながらも窓を開けると
「こんにちは」
「あんたマル暴か?」
「そうだ。新しく海沢会の担当になった〈有田〉だ」
「ご丁寧に挨拶とはどうも」
「今から何するつもりだ。ここは芽久山組のシマだぞ」
「別になんてことないよ」
すると有田が平手にして伸ばして来た。
これは恐らく金の事だろう。
そう言えば石原も同じようなことをしていた。
俺は有田のことをじっと見てから
「いくらだ」
「百万だな」
俺は池上の方を向いて
「持ってるか」
「えぇ、一応金庫から持ってきてます」
「まぁもぬけの殻だからな。それくれ」
「分かりました」
池上はカバンから百万を取り出し、俺に渡して来た。
そのまま有田に手渡すと
「よし、これでお前らのことは全部チャラにする。好きにして行け」
そう言ってその場を去っていった。
あの刑事、石原が担当だった際は一切見たことがない。
何かただものではなさそうな雰囲気を覚えながらも、目の前を見るとタイミングよく芽久山組の連中が帰ってきていた。
俺は池上に
「よし、行くぞ」
「はい」
まず俺が助手席から降り、そのままゆっくりと歩き始めた。
連中は全部で五人だ。
組長がいるのにも関わらず、警護が薄い。
俺はチャンスだと思い、拳銃を取り出して一人を撃ち殺した。
当然、向こうも拳銃を取り出してきたため、後ろから池上も援護射撃をした。
三人を余裕で撃ち殺し、俺はすぐにもう一人の男も射殺した。
あとは芽久山組長ただ一人だ。
目を見開きながらも俺の方を向いて
「ちょっと待て。あれは違うんだ」
「何が違うんだ」
「あれは若い衆が勝手にやったことなんだ」
俺は微笑みながらも
「じゃあ若い衆が勝手にやったのなら、組長のお前もけじめをつけないとな」
そう言って芽久山の頭に弾を撃ち込んだ。
すると事務所の玄関から二人の男が出て来た。
一人は池上に撃ち始め、俺はその二人を一気に射殺した。
俺は池上を抱きかかえ
「大丈夫か?」
「・・・兄貴、俺・・・足洗えますかね・・・」
「当たり前だろ。大丈夫だ」
「良かった・・・」
そう言って目を瞑って息を引き取った。
俺は悔しい気持ちを堪えながらも、その場を去ることにした。
舎弟の池上までも死なせてしまった。
その悔しさを思い、つい涙が出ながらも、車に向かって歩き始めた。
だが、これで芽久山組へのけじめは果たした。
後はあの二人と対峙をするだけだ。
なんとかしてでもけじめを付けなければならない。
どんな手段を使ってでも・・・
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