第7話~マル暴の秘密~

俺は石原に指定された喫茶店近くでタバコを吸いながらも待っていた。


芽久山組の若い衆により、藤沢がやられた。


これは敵討ちも視野に、色々と準備をしなければならない。


そのためには石原には少しばかり援助を求めなければならないのだ。


すると、携帯に突然電話がかかってきた。


相手は菊池であり、嫌な予感を抱きながらも出た。


「もしもし」


『俺だ。ちょっとお前の耳に入れてほしいことがあってな』


「はい?今、忙しいんだが」


『まぁ黙って話を聞け』


そこから菊池の話を少しばかり聞くことにした。




二時間後、石原が喫茶店に着いた。


椅子について店員にコーヒーを注文してから


「遅くなった、悪いな」


「大丈夫だ。ちょっと考え事をしていたから」


「例の藤沢の件か?」


「あぁ。それより、例の飯田組の件。片付けてくれたか?」


「それなら安心しろ。全て闇に葬ったから」


「それならいいんだ」


石原には飯田組襲撃の件で、死体処理や現場の証拠隠滅などを手伝ってくれており、今回は飯田組が集団で失踪したこという俺の筋書きが完成したのだ。


石原の友人には公安の連中もいるため、色々と策略が効くのだ。


すると石原が


「どうするんだ。芽久山組を襲うのか?」


「あぁ。だが、その前にちょっと聞いておきたいことがあってな」


「なんだ」


「お前、芽久山に何か吹き込まなかったか?」


「は?」


一気に石原の顔色が変わった。


コーヒーカップを持つ手が震えており、終始下を俯いている。


これは図星だ。


石原は良くも悪くも分かりやすい人間である。


恐らく石原が芽久山に藤沢組を襲撃するように仕掛けたのだろう。


芽久山をどのように転がしたのかは分からないが、それでも石原がしたことは裏切り行為であり、許される話ではない。


俺はそれを込めて追及すると、石原は体を震わせながらも


「聞いてくれ」


「なんだ」


「あ、あのさ。これ全部菊池がしでかしたことなんだよ。俺は菊池の指示通りに動いていただけなんだよ」


「菊池?」


それはおかしな話だ。


実は菊池から連絡が来たのは、全て石原が裏で仕組んでいるという話であり、飯田組の若い衆が俺に襲ってきたのも、藤沢組襲撃の件も、全て裏で糸を引いているのは全て石原であると聞かされていたのだ。


もし、石原が言っていることが本当だとすれば、菊池の嘘になるのだ。


一体どれがどうなっているのか、頭の中の理解が追い付けないまま


「詳しく教えろ」


「だから、菊池が全て仕組んでたんだよ。確かに俺は命令通り動いたけど、それでもお前を襲撃した飯田組の奴も、藤沢組を襲った芽久山組の奴も、全部あいつが裏で糸を引いてたんだよ」


俺はつい舌打ちをしてしまった。


まさか裏で糸を引いていたのはあいつだなんて。


恐らく永野の知恵もあるだろう。


あいつは意外と頭が切れるやつであり、邪魔者はどんな手段を使ったって始末する人間だ。


俺のことも恐らく邪魔者の一人には言っているのだろう。


物凄く悔しい気持ちが襲ってきた。


あの時に殺しておけばよかった。


その後悔に心が惑わされながらも、俺は石原をじっと見つめてから


「念のために聞く。お前は何も知らないんだな」


「当たり前だろ。俺はマル暴だぞ。本当ならお前の会も潰さなきゃいけないところを、俺が上手くまとめてるんだからさ」


「分かった。それと〈花川会〉の件はどうなった」


「一応家宅捜索には入ったみたいだ。覚せい剤も押収して会長の加藤も逮捕されたみたいだ」


「伊藤若頭は」


「なぜか逮捕できないんだよな。理由が分からねぇ」


俺は小さく微笑んだ。


「何がおかしいんだよ」


「公安も動けないほどか。まぁそりゃそうだろうな」


「なんだよ」


「伊藤が覚せい剤密輸の件では主導権を握っているのは知っているよな」


「あぁもちろんだ」


「それなのに何故逮捕出来ねぇのか。それは一つの俺の推測がある」


「教えてくれ」


「それはな、伊藤のバックにいる人間だよ」


「誰なんだよ」


その正体は〈現・公安部長〉だ。


それを聞くと、石原は目を見開きながらも俺の方を見た。


公安部長は元々組織犯罪対策課の一人であり、〈花川会〉と癒着関係にもあった。


それに当時、担当していた組の一つに伊藤が若頭をしており、そこから二人の関係は始まったと言われている。


そのため、伊藤がいくら犯罪を積み重ねたとしても、公安部長が今のままでいる限り、全ての犯罪は闇の中に放り込まれるということだ。


俺は何度も噂の一つとして聞いていたのだが、この伊藤の件ではっきりと分かった。


ヤクザもヤクザなら、警察も警察である。


自分たちの欲や地位にしがみつきたいがあまりに、犯罪を見過ごすような警察も俺らと同じ立場だと思うのだ。


すると石原が


「じゃあ、公安部長を辞めさせるしかないのか?」


「当たり前だろ。方法は俺が考えてやっから」


「良いのか。花川会はお前の会の兄弟分だぞ」


「別にあの会が無くなったところで、俺は困りはしねぇからよ。規模が減る訳じゃないし」


「そうか、じゃあ教えてくれ」


「それはな・・・」


すると、目の前に見知らぬスーツ姿の男二人が来た。


この二人をどこかで見たことがある。


そう思っているうちに、拳銃を取り出し、石原を撃ち殺した。


俺は近くに置いてあるフォークを取り出し、一人の男の目に刺した。


痛がっている男を見ているもう一人の男を、チャンスだと思い拳銃で撃ち殺した。


まだ痛がっている男の耳元に近づき


「おい、てめぇらは誰だ」


「・・・芽久山組・・・だよ・・・」


「そうか」


そう言って痛がっている男を射殺した。


石原を見たが、既に亡くなっているため、見開いている目を閉じて、その場を離れることにした。


石原には悪いことをした。


俺が勝手に利用して、その結果、関係のない奴らから殺された。


それを悔やみながらも、すぐに芽久山組に足を向けることにした。


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