第5話~おじきの企み~

俺の姿は〈飯田組・事務所〉にあった。


先程俺のことを襲撃したことも含めて、飯田にはけじめを付けてほしいと思い、訪れたのだ。


例えおじきのような関係性であっても、若い衆が勝手に襲撃したとは思えない。


恐らく飯田が指示を出したのだろう。


それに関してはきちんとけじめを付けてもらわなければ、俺の気が済まないのだ。


組長室では、目の前に飯田が足と腕を組みながらも、俺のことを睨みつけていた。


これは図星だなと感じながらも


「他の若い衆は」


「今日は闇金の集金活動で外に出ている」


「総出ですか」


「あぁ」


それは珍しいことだ。


闇金の集金は俺もチンピラ時代やったことがあるのだが、基本は二人だけで外に出す傾向がある。


だが、若い衆含め十人以上が外に出るとなると、なんだか怪しい。


だが、今はそれどころではないため、微笑みながらも


「それよりおじき、酷いじゃないですか。若い衆に俺を殺せと指示するなんて」


「馬鹿野郎。お前、よくも萩田をやってくれたな」


「おじき、あなたも正直分かっていたんでしょ。萩田が〈花川会〉に情報をリークしていたなんて」


「・・・」


飯田も可愛がっていた萩田が、この世界では罪に等しいことをしていたとは考えたくなかったのだろう。


親の気持ちというものはそんなものだ。


だが、俺ははっきりと飯田の目を見ながら


「それは、ヤクザとしては掟破りに等しいことです」


「でも、お前兄弟分の盃交わしてたんだろ?」


「交わしてませんよ。別にチンピラ時代に仲良かっただけですから」


「そうか。でも残念だよ。まさか君が萩田の玉を取るなんて」


「もしかして、今も狙ってますか?」


飯田が顔をそらした。


俺はすぐに状況を察知したため、立ち上がりドアを目の前にして拳銃で何発か撃ち込んだ。


すると奥から倒れ込む音が聞こえたため、扉を開けて確認すると、そこには幹部の一人が倒れ込んでいた。


恐らく部屋から出たタイミングで襲撃しようとしたのだろう。


そんなことはお見通しだ。


俺は若いとはいえ十年以上もヤクザの世界で生きて来たのだ。


こんな単純な方法はすぐにわかるのだ。


俺は微笑みながらも飯田の顔を見た。


予想外だったのか、飯田は目を見開きながらもこちらを見ている。


俺は飯田に近づきながらも


「おじき、残念ですよ。藤沢の親分が泣きますよ」


そう言って椅子に腰を掛けた。


「ば、バカ野郎。藤沢が聞いたら、お前なんてすぐに破門だ」


「破門? 別に飯田のおじきをやったわけじゃないですからね。それも萩田はあんたを裏切って若頭補佐になろうとした。それこそ、本来なら破門レベルではないでしょうか」


「そ、それは」


「で、あんたは俺を殺そうと企んでいる。ですが、あんたと俺は盃を交わしていませんし、藤沢の親分があんたのところに敵討ちに来ますよ」


「それは困る」


「すぐに企みを認めたら、考えますよ」


「でも、俺は萩田と親子の盃を交わしている」


「俺は萩田と交わしていません」


「・・・」


将棋であれば王手の状態だ。


これで飯田が俺への企みを話せば、俺はすぐに拳銃を抜けるのだが・・・


すると飯田が額から汗を垂らしながらも


「頼む。見逃してくれ」


「認めるんですね」


「だが、若い衆がお前のところに襲撃したのは、俺の指示じゃない」


「は?」


この期に及んで責任逃れか。


良い歳にもなって恥ずかしい限りだと感じながらも、俺はため息をして


「じゃあ、一つチャンスを上げますよ」


「なんだ」


「ロシアンルーレットしましょう」


「は?」


「今、この拳銃には一つしか弾が入ってません。お互い交互に撃っていきましょう。それでもし仮に俺が死んだら、あんたは自由の身だ」


「でも、俺が撃たれれば」


「死にますね」


俺は微笑みながらも言った。


飯田は怯えた表情で


「それは出来ん」


「あら、ヤクザとしては相応しくないセリフですね。体張らなきゃいけないんでしょ? 私も死ぬ可能性は50%あるんですから」


「・・・」


「やりましょうよ」


飯田はしばらく目を瞑り考え込んでから


「・・・分かった」


「ではチャンスは四回です」


これは良いチャンスだと思い、ロシアンルーレットを始めた。


俺は頭に銃を突き付けて、すぐに引き金を弾いた。


しかし「カチッ」と音だけが鳴り、俺は助かった。


次に飯田が震える手を抑えながらも、引き金を弾いた。


しかし、音だけが鳴り飯田は助かった。


俺は微笑みながらも拳銃を頭に付けて、引き金をすぐに引いた。


しかし、助かった。


飯田は目を見開きながらも俺の傍に来て


「頼む、助けてくれ」


「ゲームはまだ終わっていませんよ」


「死にたくないんだ」


俺は微笑みながらも拳銃を手に取り、飯田の頭に拳銃を突き付けた。


飯田の体は震えている。


俺はそれを逆手に拳銃の引き金を弾いた。


しかし、音だけが鳴り彼は助かった。


飯田は安堵した表情で背中を向けた。


俺はすぐにズボンから拳銃を取り出して、飯田目掛けて撃ち込んだ。


弾は発射され、飯田はその場に倒れ込んだ。


俺は微笑みながらも


「ごめん。銃間違えたわ」


これで邪魔者は一人減ったのだった。


俺はすぐに組長室を出て、窓から下を見下ろした。


すると玄関付近では若い衆が銃を構えて待っている。


なるほど、そういうことか。


外に出させたと思わせて、玄関付近で襲撃する予定だったのか。


俺は近くに手りゅう弾が段ボール箱に山積みのように置かれているのが分かった。


手りゅう弾の栓を抜き、窓から放り込んだ。


俺は窓下にしゃがみこみ、耳を塞いだ。


大きな爆発音とともに男達の叫び声が聞こえた。


何人かが階段を駆け上がって来る音がしたため、一人ずつ拳銃で撃ち殺していった。


恐らく今の爆発で多少の怪我をしているため、俺にとっては好都合だった。


これで飯田組は壊滅だ。


邪魔な組はもう一つあるが、それはあえて泳がしておこう。


俺は微笑みながらもタバコに火を付けて、煙の中を歩き始めたのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る