第4話~マル暴の密告~
俺は警視庁組織犯罪対策課・石原と警視庁近くの古い喫茶店で話をすることにした。
石原と俺は奇遇にも同じ高校に通っており、尚且つ同級生。
高校の軽音楽部にて俺はギター、彼はドラムスを担当していた経緯があるため、そこからの繋がりである。
コーヒーを二人で飲み始めてから、俺が
「どうだ。最近のそっちの動きは」
「海沢会は特にマークはしてないが、ちょっと花川会で色々とあってな」
「どうしたんだ」
「公安の連中が、今度花川会本家を家宅捜索する予定だ。例の覚せい剤密輸の件がバレたみたいなんだ。お前らも気を付けろよ。ちょっと上の方はそれでピリピリしてるからな」
「ありがとよ」
「それで、例の菊池の件だったな」
「あぁ」
「これ見てくれ」
そう言って石原は一つの紙の束を渡して来た。
そこには、菊池の動向や過去の犯罪歴が一覧で載っていた。
これは恐らく百を超える事件の件数であり、俺は目を見開きながらも一枚一枚めくった。
俺は唇を震わせながらもコーヒーを一口飲んでから
「これは、本当に菊池がやったのか」
「あぁ。まぁお前が知らないわけだよ。これは全部上がもみ消しにした」
「上って公安か」
「そうだ。恐らく菊池と公安は裏で繋がっている。今回の山田前会長殺しでも、菊池は公安に情けを見せて、もみ消しにしてもらったんだろう」
「なるほど」
だから菊池と永野は誤魔化した答えしかしなかったのか。
恐らく別の理由で殺されたのだろう。
会長・若頭の席だけではない、全く別の理由が・・・
すると石原がコーヒーを一口入れてから
「恐らく、動機は一つ。花川会との合併の件で山田前会長と揉めたんだろう」
「合併!?」
「あぁ、菊池は密かに花川会との合併を視野に入れていた。恐らく加藤会長ともそれで上手くまとまっていたんだろう。だが、それに反対論を投じたのが山田会長。それで邪魔になり殺害した後、自分が代替わりをし、上手く花川会との合併を進めるつもりだったんだろう」
「俺たちは何も聞いてねぇぞ」
「勝手に二人で決めるんだろう。あいつらは盃云々の前に、会長と若頭、この地位だけが強いと思い込んでいるんだろう」
「そうか」
それはお門違いだ。
確かにヤクザにも上下関係がある。
だが、海沢会の掟としては盃が優先順位と考えており、会長になった人間は直参組長・若頭とは杯を交わすことが定例となっている。
だが、菊池はそれをせずに会長の地位だけで全ての物事を決められると思ったら大間違いだ。
本当に海沢会の人間なのかと思い込んでしまった。
「恐らく花川会に公安が家宅捜索に入ることは、菊池たちは知らないことだ。全部が明らかになった時、あいつらは拍子抜けするんだろうな」
「公安は一体何をしたいんだ」
「お前には悪いが、〈花川会〉と〈海沢会〉この二つの組織を潰すためだよ」
俺は鼻で笑ってから
「ヤクザを目の前にしてそんなこと言っても良いのか?」
「お前も分かってるんだろ。公安がそろそろ潰しにきていることを」
そうだ、俺は当然知っている。
石原の情報を頼りに、色々と調べてみたこともある。
確かに公安の動きは俺たちをまるで真綿で首を締めるように、潰しにかかっているのが分かる。
取引先の事務所に急遽家宅捜索を入れたり、今回の先代の葬儀では、当初来る予定だった九州地方の暴力団組織に圧力をかけて、結局参加を見送らせたりと公安の目は俺には見え見えだった。
俺は黙ったままコーヒーを一口入れた。
すると石原がゆっくりと顔を近づけてきて
「悪いことは言わねぇ。海沢会と縁を切ることでお前も生き残れるんだぞ」
「分かっている。それは組長になってから考える」
「は?」
「今は藤沢に恩があるんだよ。若頭でいる以上、今は行動はできねぇ」
石原は微笑んでから
「そう言うと思ったよ。まぁお前とこの組は悪いようにはしねぇ。後はお前がどう動くかだよな」
そう言って喫茶店を後にした。
今の石原の言葉には引っかかる部分があった。
俺がどう行動をするのか。
考え方によっては、組を守る代わりにお前が行動して会を潰せという言葉にも聞こえる。
だが、これは一旦持ち帰らなければならない。
藤沢に相談をしたうえで全ての判断を下す。
それが若頭の担当だ。
そう思い、俺は喫茶店を後にしようとした。
店を出ると、突然二人の男が近づいて来た。
手元にはナイフを持っており、恐らく俺のことを刺そうとしているのだろう。
送らせたのは菊池と永野だろう。
俺は微笑みながらも
「誰から雇われた」
男たちは黙ったまま向かってきた。
俺は先に向かってきた相手を拳銃で二発腹に撃ち込んだ。
後ろから追ってきたやつもそれに動じずに、ナイフを持ち向かってきたため、その男にも頭に一発撃ち込んだ。
俺は黙って死んだ男二人の胸元を見ると、そこには完全に海沢会のバッヂがあった。
バッヂを付けているということは、恐らくそうに違いない。
すると石原が走りながらも俺に近づいて来て
「どうしたんだよ」
「見ればわかるだろ」
石原が倒れている二人を見ながら
「あぁ、飯田組の奴か」
「は?飯田?」
「この二人、前に闇金の恐喝容疑で引っ張ったことがあったんだよ。結構飯田組は闇金には力入れているからな」
「なんで飯田の奴が」
「もしかして、飯田組の誰かをやっちまったんじゃねぇのか?」
その時、すぐに直感が閃いた。
恐らく萩田の敵討ちだろ。
飯田は萩田のことを心から可愛がっていた。
恐らく萩田が若頭補佐に取り立てたのも、快く送り出したのに違いない。
まさかの方向からの攻撃に、俺はただでは置かないと感じてから
「石原」
「なんだ」
「ちょっと頼みがある」
「面倒なことじゃなければな」
俺は微笑みながらも石原の方を向いて
「簡単なことだよ」
そう言って石原に頼みを伝えるのであった。
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