第2話~会長の葬儀~
先代・山田会長の葬儀が執り行うことになった。
直参の幹部からそれぞれの二次・三次団体の幹部まで、およそ百名近くが揃った。
藤沢と俺も参加することになり、葬儀を見守ることにした。
喪主は山田の妻・秋絵が行い、弔辞は兄弟分を結んでいる暴力団組織〈花川会〉の会長〈加藤〉が担当した。
やはり関東最大の暴力団組織の会長もあってか、様々な暴力団組織の幹部も集まってくれており、それを誇らしそうに菊池は見つめていた。
だが、俺たちは呑気に安心していられない。
山田を殺害した疑惑が残っている菊池に対して、どう真相にたどり着き、けじめを付けさせるのか。
それが些細な償いでもあるのだ。
葬儀が終わり、火葬が済んだ後、本家にて〈海沢会〉の幹部一同だけで食事会を開くことになった。
周りは黒いスーツ姿であり、なんだかいつも通りの感覚を覚えた。
本家の舎弟たちが次々に幹部に食事を提供し、黙って食事をしている。
俺も藤沢の隣で、黙って箸を動かしていると、奥の真ん中に座っていた菊池が立ち上がり
「おい、みんな。ちょっと食べてる途中だが、聞いてもらってもいいか」
一気に幹部たちがこちらの方に向いた。
「聞くところによると、俺の会長就任と永野の若頭就任に対して、不平不満があると聞いている。一体誰なんだ」
周りの空気が一変し、緊張感に変わった。
「俺はな。チームワークがこの会で一番大切だと思ってるんだ。そんな輪を乱す奴がいるとするならば、俺としては看過できない。誰なんだ。俺に弓弾こうと企んでいる奴は一体誰なんだ」
すると、一人の幹部が立ち上がり
「親分。俺はあんたと一緒に歩めるか不安なんだよ。まだ、あんたと親子の盃を交わしてない。だからこそ、これが言えるんだよ」
「そうか。まだだったな」
すると菊池は永野の方を向き、永野は立ち上がった。
そのまま腰から拳銃を取り出して、その幹部を撃ち殺した。
一体何のことか分からず、周りは戸惑っていた。
菊池は声を荒げながらも
「おい。てめぇら、こいつと同じこと考えてねぇだろうな。あぁ? 言っただろ、俺はチームワークを乱すやつは嫌いだって。分かってんだろうな」
一気に周りは黙り始めた。
つまり、菊池が言いたいことは「俺に逆らう奴は殺す」ということだ。
まさかの行動に俺も唖然としていると
「それとな。今回から新しく若頭補佐を取り立てることになった。まだ誰とは今は言えないが、そのうち会合で伝える。それじゃ」
そう言って菊池と永野はその場を離れた。
周りはその瞬間、ざわめきを奏で始めた。
俺は藤沢に
「どういうことですか」
藤沢はため息をしてから
「ついに、本性を現したということか」
「どうするつもりですか」
「例の件。すぐに始めてくれ」
「分かりました」
俺はすぐに部屋を出てから、庭に足を踏み入れた。
すると、近くで菊池と永野が会話をしていた。
俺はすぐに木の後ろに隠れ、耳を立てた。
永野は微笑みながらも
「これで、いいんですか」
「あぁ。俺に楯突くやつは全員たりとも生かさない。それと、さっき俺に楯突いたあいつの組、全員殺しておけ」
「生かさないんですね」
「馬鹿野郎。一人でも生かしたら、俺が何されるか分からねぇだろ」
「分かりました。手配しておきます」
「よろしくな」
あいつら、本当に人間なのか。
確かにヤクザは世間では虫けらの存在なのは分かっている。
だが、そいつらにも家族がいる、恋人もいる。
なのにまるでハエを殺すかのように簡単に命令をする。
俺はそれがたまらなくなり、拳を強く握りながらも、二人が消えたことを確認し、携帯で電話をかけた。
「もしもし、俺だ。ちょっと聞きたいことがあるんだ。どこかで話が出来ないか・・・分かった。じゃあそこで」
そう言って電話を切った。
すると近くから
「あれ、大川じゃん」
よく見ると、チンピラ時代から共に歩んできており、現在は〈飯田組・若頭〉をしている〈萩田〉の姿があった。
久しぶりの再会であったため、俺は手を上げてから
「おう、萩田。元気そうじゃないか」
「当たりめぇだろ。新しい若頭補佐に決まったんだからさ」
「若頭補佐? 本家のか」
「当たり前だろ。他にどこがあんだよ」
菊池が言っていた「若頭補佐」の件は、まさかの萩田のことだったのか。
今まで設置しなかったポストであったため、そこにも意外性を覚えたが、それがある意味兄弟分のような関係である萩田が就任することに驚きを隠せなかった。
確かに萩田は飯田組の中では、かなりの凄腕で知能が溢れているヤクザだ。
闇金運営だけではなく、まだ日本ではあまり出回っていない薬物を海外から仕入れ、売りさばいている方法も覚え、飯田組だけでもかなりの金を撒き上げている。
だが、飯田組長を抑えて若頭に就任するのは、俺は永野と同じことで、少し不安を覚えながらも
「いいのか。飯田のおじきを差し置いて」
「会長が取り立ててくれたんだ。飯田の親父もすぐに呑んでくれたさ」
確かに食事会にあんなことをされたら、誰だって逆らえなくなる。
恐らく菊池は威圧と権力でこの会を仕切るつもりだ。
そんなことをしたとしても誰もついて行かない。
そう感じながらも
「なぁ、さっき狭山のおじきがやられたんだ」
「あぁ、聞いたぞ」
「お前、何とも思わないのか?」
「別に。会長に逆らったらあぁなるって、逆に示しがついたんじゃねぇのか」
「会長の味方か?」
「逆にお前は敵なのか?」
一瞬、俺と萩田の間に稲妻が見えた。
昔の萩田ではなく、会長付きのただの若頭補佐に見えた。
すると萩田が微笑みながらも
「あぁそうだ。会長がお呼びだぞ」
「会長が?」
「あぁ」
そう言って萩田は廊下に上がり、すたすたと歩き始めた。
菊池が俺に一体何の用だ。
逆に気になりながらも黙ってついて行くことにした。
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