双子のひなまつり

遥 述ベル

双子のひなまつり

 2月28日。

 娘と息子がお雛様を幼稚園で作ったらしい。


「「ママみてー!!」」


 幼稚園に迎えに行くと、ハモったうちの双子が私にお雛様を見せてくれた。

 娘の美玖みくと息子の幸樹こうきだ。


「二人とも上手くかけてるね~」


「でしょー!」

「めっちゃかわいくかけたの!」


 二人が作ったものは幼稚園で飾るため後日持って帰ることになる。


 美玖はそれが名残惜しく感じたようで、帰り道にこう言い出した。


「ねえ、ママ。おうちにひなにんぎょうあるの?」


「うちにはないよ」


「えー、なんで?」


「でも、ちらし寿司とひなあられがあるよ」


「やだ! ひなにんぎょうほしい!」


 美玖は立ち止まって駄々をこねてしまった。

 一方で幸樹は「はやくかえろー」と私の手を引っ張る。


 少し悩んだが、二人を育てるだけで精一杯の我が家。

 本格的にひな人形を買うのは難しい。

 小さいのを買うのもいいけど、それよりもっと良さそうなことを思い付いた。


「じゃあ、みーちゃんが作ってみたら?」

「どうやってつくるの?」


「帰ったら教えてあげる」

「わかった!」

 美玖は嬉しそうに笑い歩き出してくれた。




 帰ってから──。

「ここを斜めに折って、絵を描いて軽く半分に折ったらいい感じでしょ。いっぱい作って並べな」

「うん! つくる!」


 幸樹が寝ている隣で美玖はどうしようと悩みつつ作業を進めていく。


「みーちゃん、そろそろご飯だからこうくん起こして!」



 三人でご飯を食べる。

 あれを描いたこれを描いたと報告する美玖。


「こうくんもやる!」

 幸樹もそれを聞いてやりたくなって、食後に二人でわーわー言いながら次々とお雛様が誕生していく。


「ママできた!」


「おー! これは誰?」


「トリさん!」

「トリの降臨だね」


「じゃー、みーちゃんはうささんかく!」


 最終的にこの後の土日までに、50人以上のお雛様が集合することになるとはこの時はまだ知らない。




「ただいまー」


「パパ帰ってきたよ」


「パパみて! いっぱいおひなさま!」


「おー、すごいな! 全部作ったの?」


「こうくんもした!」


「いいねー! じゃあ、飾らないとな」


 その結果、3月3日には家中にお雛様が置かれることになった。




「また来年もよろしくね」


 きっと、普通に買うよりも思い出に残るひなまつりになったはずだ。

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双子のひなまつり 遥 述ベル @haruka_noberunovel

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