異世界テニス無双! 〜ラケット片手に精霊討伐〜


「……なんでテニスラケットとボールなんだよ……」




異世界に召喚された俺は、手元のテニスラケットを眺めて絶望していた。


周りを見渡せば、同じく召喚された他の三人もそれぞれ奇妙な道具を持っている。




「俺、シェフなんだが……」


コンロと包丁を手にした男が呆れた声を漏らす。




「水やり……って何?」


ぞうさんジョウロを持つ女性が不安げに呟く。




「お、俺……種……」


種を握りしめる少年は、もはや泣きそうだ。




その時、声が響いた。




《異世界の旅人よ。お前たちはこの世界の精霊を討伐する運命にある》




俺たちは、この世界の火・水・草の精霊を倒さなければ元の世界へ帰れないらしい。


しかも、持ってきた武器で職業が決まり、変更は不可能。




「え、俺の職業『テニス』なんだけど?」


「俺『シェフ』だし!」


「水やりって職業なの!?」


「種……(泣)」




どう考えても詰んでる。




しかし、生きて帰るためにはやるしかない――!





---




第一の試練:草の精霊討伐




最初に狙うのは草の精霊。


幸い、シェフ(火属性)の料理スキルで炎を操れるらしい。




「火は草に強い! これならいけるぞ!」




シェフの炎が草の精霊を焼き、俺はテニスラケットで飛び散る草の破片を弾き飛ばして削っていく。




「いっけええええ!!」




最後は、強化したテニスボールをフルスイング。


スマッシュが炸裂し、草の精霊は燃え尽きた。




《草の精霊、討伐完了》




「やった! これで一歩前進だ!」





---




第二の試練:火の精霊討伐




次に挑むのは火の精霊。


ここで水やり(水属性)の女性が活躍する。




「まさか、ジョウロの水で戦うことになるとは……!」




彼女が水を撒き、俺はテニスのスライスショットで水を拡散。


火の精霊の炎を弱め、少しずつダメージを与えていく。




「これで決める!」




最終的に、水をたっぷり吸ったテニスボールを火の精霊に打ち込み、火を完全に消し去った。




《火の精霊、討伐完了》




「残るは水の精霊……!」





---




第三の試練:水の精霊討伐




最後は水の精霊。


しかし、草属性の『種』の少年は未だに弱すぎて戦力にならない。




「やっぱり無理なのか……」




水の精霊は強敵だった。


俺のテニスラケットは無属性で決定打を与えられず、他のメンバーも歯が立たない。




だが、その時――




「待て、俺がやる!」




種の少年が立ち上がった。




気づけば、彼の周りには大量の植物が生い茂っていた。


彼は、自分の能力を使い続けていたのだ。




「俺の能力は、種を育てて進化させること……!」




彼が育てた特殊な種は、周囲のステータスを爆発的に上げる効果を持っていた。




「行け! 強化されたラケットで決めろ!」




「……おう!!」




俺は、最強に強化されたテニスラケットを握りしめる。


水の精霊が巨大な波を生み出すが、俺はそれを打ち砕くようにボールをスマッシュ。




「喰らええええええ!!」




ボールは衝撃波となり、水の精霊を消し去った。




《水の精霊、討伐完了》





---




エピローグ:帰還




「やった……ついに……!」




すべての精霊を倒した俺たちは、元の世界へ帰還する資格を得た。




異世界での戦いは終わり、俺はテニスラケットを握りしめながら呟いた。




「……もう二度と、テニスしたくねえ」




他の仲間たちも苦笑いしながら、それぞれの武器を見つめる。




こうして、異世界テニスの冒険は幕を閉じたのだった。




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