1ページ完結 短編集 ファンタジー

@RYO-o-o_o-_-

最弱からの昇格戦

第一章:最弱の兵士、戦場に立つ


 「敵襲だ! 敵襲!」


 朝靄の中、国境の砦に響き渡る兵士の声。大国ヴァルディアの侵攻が始まった。


 俺、レオンはただの兵士……いや、正確には職業【ポーン】。

 普通の兵士よりは強いが、劇的に強いわけではない。スキルは「戦闘開始から二分間ステータスアップ」だけ。


 二分が過ぎれば、ただの凡人に戻る。


 「ビショップ様、ルーク様はまだか!?」

 「……間に合わない! 敵の精鋭部隊が先に来る!」


 焦る仲間たち。国には【ビショップ】や【ルーク】といった特別な職業の者がいる。彼らならこの状況をひっくり返せるかもしれない。


 だが、ここにはいない。


 俺たちは、自分たちだけでこの砦を守らなければならない。


 「……やるしかねぇ!」


 俺は剣を抜き、敵兵へと向かって駆け出した。



---


第二章:二分間の英雄


 戦場は混乱していた。


 「ポーン・ブースト、発動!」


 二分間だけ、俺は強くなる。敵兵を斬り伏せ、仲間を守る。


 だが——


 二分は短すぎた。


 スキルの効果が切れた途端、動きが鈍くなる。敵の刃が迫る。仲間たちが次々と倒れていく。


 「くそっ、もう終わりか……?」


 俺の剣は重く、体は鉛のようだった。


 「まだだ……! まだ、終わらせない!」


 だが、俺の体は正直だ。力が入らない。


 その時だった。


 俺の脳裏に、かつての訓練の記憶がよぎる。


 ——なぜ、ポーンには昇格の概念があるのか?

 ——ポーンは、チェスで最も弱い駒。しかし、最も可能性を秘めた駒でもある。

 ——ポーンが最後まで進めば、どんな駒にもなれる。


 「……本当に、そうなのか?」


 これまで俺は、ポーンの限界を自分で決めていたのではないか?

 二分間しか戦えない? それはただの仕様だ。


 本当にそうなのか?


 ポーンが前に進み続ければ、最強の駒になれるはずだろう?


 「だったら……!」


 俺は、限界を振り払うように剣を握り直した。


 ポーンのまま終わるつもりはない。俺は、進む。


 血が沸騰するような感覚が走る。


 職業・ポーンからクイーンへ昇格——。


 剣を握る手に、今まで感じたことのない力が宿る。


 「これが……クイーンの力……?」


 魔法が流れ込み、剣が軽い。俺は最強の存在になった。


 「……まだ終わっちゃいねぇ!」


 反撃の時間だ——。

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