第44話

「……ヒビキ?居る?」


「そりゃ居るだろ?俺が呼んでんだから」



あの日大泣きしてからアタシは涙脆くなった気がする。


ふとした事で彼を思い出し、一人で泣く。


自分でも自分がよく分からない。


寂しい?悲しい?分からない。


アタシ的には心に空いた穴は見えないようにテープでぐるぐる巻きにしている。


もう思い出さないように鍵も閉めてる。


それでもふとした時に思い出してしまう。


この前も街中で彼と同じ香水を纏った人とすれ違った。


只それだけなのに、涙がぽろぽろと零れ落ちた。



「今日は飯食って来たか?」


「うん。今日はゆっくんとダイチくんと食べて来たよ」


「そうか、楽しかったか?」


「うん!あ、見て!ゲーセンで取れた!此処に置いてもいい?」


「あぁ、いいぞ。良かったな」



ヒビキの家に来る度にアタシの物が増えて行く気がする。


初めてここに来たのは彼に突き放されたあの日で、乱のお店の前までヒビキとヒラさんか迎えに来てくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る