第34話

「泣いてねぇよ」


「泣いてたじゃん!嘘吐き!」


「……帰れ。もう俺はお前の知ってる俺じゃない」


「やだ、帰んない」


「帰れ」


「帰んない!!」


「ユラ!!」



目の前に居る彼に初めて怒鳴られた。


怒鳴られた事よりも、名前を呼んでくれた事の方が嬉しくて、嬉しくて。



「やだよ、一緒に帰りたいよ、一緒に居たいよ。すきなの、だいすきなの」


「止めろ。俺はお前なんか好きじゃねぇ」



煙草を再び吹かすあの姿は未だに変わってなくて。



「あっれ〜?この子誰〜?もしかして3P〜?男二人の方が良くなーい?」


「……なんでもねーよ、出ていけよ」


「タク、アタシっ」


「聞こえなかったのか?出て行けよ。それとも何?俺とこの女がする所見てぇの?」


「ッ……なんでっ……」


「今の俺はお前が知ってる俺じゃねぇよ。分かったなら二度と来んな。お前なんか好きじゃねぇよ」


「……ッ」



変わった事とするならば、そんな彼が放つ言葉は、誰よりも残酷だ。

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