第32話
「もー終わったのか?」
「ヤってねーよ」
「……開けるぞ」
がちゃりと開けたそこに見えるのは大きなキングサイズの真っ黒なベッドが一つ。
そこに腰を下ろして煙草を吸っている彼の姿を見つけたアタシの涙は、止まる事を知らない。
「……女は?」
「風呂」
「ヤる気じゃねーか」
「勝手に入りに行ったんだっつの」
彼は此方を見ようともしない。
消えそうな白髪の彼は以前よりもっと華奢になった気がする。
もっともっと、消えそうな彼。
"生きてて良かった"
そう思ったアタシの涙は本当に止まってくれない。
「……で?何だよ」
「お前に来客」
「来客?俺に?……ッ」
リュウさんに手を引かれて部屋の中へと入れられたアタシを見て目を見開くスカイグレー色の彼。
彼は動揺する余りに手に持っていた煙草を床に落とした。
「なんで、こんな所来てんだよ」
「……タク」
「帰れよ、二度と来るな」
「会いたかったッ、生きててっ、良かったっ!!」
彼の目に写るアタシはわんわん泣いててその所為で視界がぼやける。
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