第31話

「リュウさんっ」


「あー、着いて来ちまったのか。態々傷つきに行く事ねーだろ?」


「でもっ、アタシっ……」


「はぁ……俺な、お前の事知ってた」


「え……?」



彼の長い足に追いつくにはアタシは駅でしたようなダッシュをしなきゃいけなかった訳で。


なんとか追い付いた彼から放たれた一言に動揺を隠せずに居る。



「知ってたっつっても直じゃねーぞ?まあ何となくお前だって分かってた」


「どう……いう、意味?ですか」


「それより今はタクだな……着いてこいよ」



再び長い足を進める彼の後を追うアタシ。


知ってたって何?アタシ、リュウさんの事知らなかったけど?


そんな事を考えてたら目の前には扉があって、その前で彼は止まる。



「タク、居る?」


「……居る、何」



久しぶりに聞く彼の声はあの時と何も変わらず、枯れた筈のアタシの涙はぼろぼろと零れ落ちてシミを作った。

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