第3話 感銘
今日は初めての出勤だ。
前回の面接で遅刻したので今日は絶対に
遅刻は許されない。
家からコンビニまで迷わずに真っ直ぐ行けば
10分程だから20分前に家を出たので完璧な始まりだ。
レジに立っている人に軽く会釈して
バックヤードへ入る。
バックヤードはバイトをするまでは
絶対に入れなかった場所なので
これもまた誇らしい。
バックヤードに入るといかつい大柄の男が
例のパイプ椅子に座ってスマホを見ながら
エナジードリンクを飲んでいた。
こんな柄の悪い人が居るなんて聞いてないが
しかし挨拶しないのは良くない。
「おはようございます!」
敢えてちょっと間抜けっぽく挨拶した。
「…おはようございます」
最初一瞬止まってその柄の悪い男は
返事をした。
その後の店長との会話を聞く限り新人が入ってくる事を知らなかったみたいだった。
結局その日はその柄の悪い男と2人で回すことになったのだけれど、どうやらその男は
見た目に反して優しいらしい。
私が半額シールを貼っている商品を
割引し忘れたまま何人にも売ってしまって
わざわざ店に戻ってきて会計のし直しを
要求する客もいた。
私が新人なのもあるだろうけれど、
てっきりため息をつかれると思っていたのが
その男は、
「最初はこんなもんだから大丈夫、大丈夫」
と優しい言葉を私に掛けてきた。
その日はそんな感じでミスだらけだったが
その優しい言葉に私は軽く感銘を受けてしまったみたいで、家に帰ってからも
次こそは頑張って見直してもらうぞと
私らしくなく綺麗事を本気で思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます