第4話 バイトとこころ
そんな感じでバイトを始め1か月程たった頃、バイト人生においてとても嫌な出来事が
起こった。
いつも通りレジに立っていると、なんだか偉そうな態度のおじさんが来た。
恐らく60代くらいの、今にも理不尽にキレてきそうな見た目だった。
正直なところこの年代の客は少しでも気に食わない接客だとすぐに腹を立てて、
お客様は神様だと思っている人が多いように感じる。
まぁそれでも接客する他ないので私は、
「いらっしゃいませ〜!」
と笑顔で挨拶をした。
そのおじさんは手に何も持っていないので
きっとタバコを買うのだろうと思っていたらやはり的中した。
「…マルボロ」
と、相手に聞こえるかどうかを全く気にしていない感じで、独り言みたいにそのおじさんは言ってきた。
はっきり喋れよななんて思いながらもあくまでも笑顔で続ける。
「あ~、すみません番号でお伺いしても宜しいですか」
多分数分あれば番号無くとも探せたが
そんなに待てる忍耐力がある様にはみえない。
そもそも私は先輩や店長に番号で聞くようにと言われているのだ。
するとおじさんはこんな事を言ってきた。
「あんたはアホか?マルボロって言われたらマルボロ出せばいいねん」
やはりこの年代の人は苦手だ。
話が通じない上に自分が正しいと過信している。
「すみません」
どれだけ心では反抗していてもこう言う他は無い。
それでもそのおじさんはその後もネチネチと
侮辱してきたのだけれど、結局その後先輩が
接客を代わってくれてそのおじさんは番号を言う事なく帰って行った。
その帰り際にも
「っち、おかしいのとちゃうかあんた」
とまだ不満そうにしていた。
こう言う理不尽な客がいる事は聞いては
居たが、実際に体験すると大分メンタルに来るものがある。
しかしまぁ大概の事はそうだろう。
他人から聞く分には、
「そんなの言い返せば良いじゃん」
だとか言っているがいざ自分の番になると
そんな事出来そうに無い。
そういうのは家に帰ってきた時にどっとくる
みたいだ。
働いている間は無意識のうちに自分の心を
殺しながら働いているのかもしれない。
随分大袈裟だと思うかもしれないが、
家に帰ってから着替えて布団に入りそっと
目を閉じた時、本当にそう思ったのだ。
バイト あばらし @abarashi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。バイトの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます