第2話 やる気ないかも

「どうぞ、狭いけどそこの椅子座って」

「あ、はい」

遅刻した事、気にしてないのかななんて思いながら監視カメラのモニターやなにやら

重要らしい書類のファイルが積み重なっているデスクの前のパイプ椅子に腰かけた。

履歴書の入ったバッグを膝の上に置いたり

床に置こうとしてやっぱり膝に置いたりと

挙動不審な行動をしてしまった。

その店長らしき人は私の前のパイプ椅子に腰掛けて改まった感じで姿勢を正して私の目を見ながら言った。「よろしくお願いします」

なんだかこの人に目を見られたら蛇に睨まれている様な感覚になった。

「あ、よろしくお願いします」

と会釈をしようとして前かがみになったら

膝に乗せていたバッグがズリ落ちてバサバサと音を立てて中に入っていた履歴書や筆箱が出てきた。

こんな時きっとこの人はこう思っているんだろう。

頑張り屋だけど空回りしているんだなと。

私は確かにドジかも知れないが頑張りやさんだなんて思われたら困ったもんじゃない。

期待なんてしないでほしい。

私はもっと無責任な奴なんだから。

「あぁ、大丈夫?」

その人は慌てて落ちたバッグを拾う私に言った。

「あはは、すみません大丈夫です」

私は姿勢を正してその場を仕切り直す。

その人は、

「じゃぁ面接始めますね」

「履歴書はもってきてますか?」

こんな感じで面接は進んでいき、

「じゃぁこれから一緒に働きましょう」

と笑顔で言われ、頭に?が浮かんだ。

「え、あはい」

とよく分からない返事をしてしまってたが

よく考えたらこれは採用を意味しているの

だと気付いたが今更なにも言う事が出来なかった。

私がなにも言えずにいると、

「あと一つ聞きたいんだけどいい?」

と言われ遅刻した事など全く忘れていた私は

「はい!」

などと明るく返した。

「今日遅刻したのは何で?」

と忘れていた私にとっては思いも寄らない話だった。

「申し訳ないです、初めて来たので道に迷ってしまって」

「まぁ道に迷ったらしょうがないけど次から無いようにね」

「はい、すみません」

と大体こんな感じの会話をして家に帰ってきた。

しかし面接に行く前までは全く思わなかったが、なんだか急にバイトに対する意力というか意気込みなんかが、家に帰ってきた頃には殆ど無くなっていた。

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