因果応報列車、無限地獄を巡り続ける。

ふと、気がついた列車の中で。何気に目の
端に留まるものを見つけてしまう。

誰もいない車両。そして、自分はどうして
この列車に乗っているのか。そうこうして
いるうちに、一人の女が乗って来る。

 円筒の白い容器を手にして。

十字に縛られた紐の隙間から漏れる 
 場違いな 赫い 色彩。そして自らが
カタカタと音を立てて蠕動する白い陶器。

 あれが、気になるの?
  だったら開けてみればいいじゃない。

冷たく突き放す様な、それでいて、まるで嘲笑う様な、
           女の言葉が。

巧緻に計算されたストーリー展開と帰着。
まさに作者の真骨頂と言える、ホラーで
在りながらもミステリーの要素を絡めた
作風は、他の追従を許さない。
不条理と言いつつも、論理性を核に込めた
古典的正統派 怪談 が、今ここに奇怪な
産声を上げる。

 多く語らぬが良いだろう。

正統派怪談と読むか、外連味を備える
奇談と読むか。
        先ずはご覧あれ。

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