うちのお雛様は、仲が悪い

うり北 うりこ@ざまされ②書籍発売中

第1話

「ママ。おひなさま、まちがってるよ。ようちえんとちがう」

「正しく並べるとうちのお雛様、ケンカしちゃうんだ」

 

 四歳の娘は、私の言葉にキョトンと首を傾げた。

 

「ケンカしちゃうの? ごめんねしないの?」

 

 なるほど。そうだよね。

 いい加減、仲直りしなよ……と視線を向けるが、お雛様は素知らぬ顔だ。


「仲直り、できたらいいね」

「ごめんねしてね」


 そう言いながら、娘はお雛様を撫でた。




 最初にお雛様の異変があったのは、私が中三の時。

 三人官女の一人が下の段に落ちていたのだ。

 不思議に思いつつ戻せば、次の日から毎朝、三人官女の誰かが落ちている。


 今思い返せば、ちょっとしたホラーだが、あの時の私はなぜか真ん中に座っている三人官女と、大鼓を持っている五人囃子の位置を入れ替えた。

 すると、次の朝には三人官女が落ちていることはなくなり、かわりに小鼓を持った五人囃子と三人官女は見つめ合うように、向き合っていた。

 翌朝、その二人は寄り添うように位置し、さらに次の朝になると座っている三人官女はよそを向き、小鼓を持った五人囃子が倒れていた。


「うーん。破局かな」


 なるほどと勝手に理解し、他の二人の三人官女も順番に小鼓を持った五人囃子の隣に並べてみたが、三人仲良く三日で破局した。


 同じ経験をし、どうなるのか。

 再び三人官女を並べると、翌朝には、他のお雛様から拝借した弓矢や剣を三人官女たちは手にしていた。

 恋により、溝が深まったらしい。


 三人官女を横並びにすることは諦め、配置換えをすれば平和になった。


 しかし、高三の時、今度は徐々に男雛と女雛の座っている距離が遠くなっていった。

 夫婦の危機というやつだろうか。


 この二人の位置を変えるのは……。

 女雛と三人官女を入れ替えたら、不倫問題勃発しない?

 立場が上の二人を下に下げるのも、どうなの?


 話し合うべき。


 そう判断し、二人を向き合わせて座らせた。

 結果、翌朝二人は元の位置より更に離れ、正面を向いてすまし顔をしていた。

 思ったよりも闇が深かったらしい。

 夫婦間のことに口出しするのは良くないと、それからは何もしていない。




「そろそろ、本当に仲直りしてよね」

 

 正しい位置へとお雛様を並べる。

 明日の朝、どうなっているだろうか──。

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