願う、君が健やかであることを
保紫 奏杜
君を思う
彼女の手が、小さな
あの子が生まれた年、彼女の両親が日本から送ってくれた手乗りサイズの人形だ。
手のひらに乗せた人形の長い黒髪を、彼女の指先が
「あの子の髪はもう少し、明るかったわね」
「そうだね」
僕は、泣きそうな瞳で
きっと僕の顔も同じように、彼女の目に映っているのだろう。
彼女が窓からの景色が見えるテーブルの上に、透明な花型の台座を置いた。優しい手付きで花の上に座らされた人形が、その
二重で大きめの黒目、
僕は毎年、そこに小さな娘を重ねずにはいられない。
あの時。この手で掴んでいた娘の手を、僕は放してしまった。仕事の連絡が入り、そちらに意識がいってしまった。更には突発的な爆発事故が起こり、逃げ惑う人々の中、とうとう僕は娘を見つけられなかったのだ。
「こっちもね」
彼女によって、娘の傍に
「今頃は恋人ができていたりして」
ふふ、と悲しげな
「僕が認めた男でないと、許さないよ」
僕は心から、そう答えた。
僕たちの小さな娘の遺体は、見つからなかった。あの子が大事に抱いていた兎のぬいぐるみだって、見つかっていない。焼け跡から見つかったのは、あの子の片方の靴だけだ。だから、僕たちは娘が生きていると信じている。
どうか、あの子が病気や怪我をせず、
そして、迷わずに僕たちの元へ帰ってこられるように。
僕は娘に似た
願う、君が健やかであることを 保紫 奏杜 @hoshi117
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