第3話 囁く声
「……た……すけて……」
どこからか、かすれた声が聞こえた。
「お雛様……お雛様……」
声が、少しずつ近づいてくる。
——ゴトリ。
雛壇の一番下にいた三人官女の人形が、突然床に落ちた。
綾乃は固まった。
風もないのに。
(誰か、いる……?)
すると、蝋燭の灯りが一瞬揺らぎ、影が壁に映った。
人の形をしている——だが、それは人ではなかった。
細く長い指が、そっと綾乃の肩に触れた。
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