第2話 閉ざされた部屋

 祭りの夜、綾乃は村の神社へと連れて行かれた。そこには大きな雛壇が置かれており、彼女は十二単を着せられ、最上段に座らされた。


 「綾乃、動いてはいけない。名を呼ばれても、決して答えてはいけないよ」


 巫女がそう言い残し、扉を閉める。


 ひとりきり。


 蝋燭の炎が、静かに揺れた。


 神社の中は湿っぽく、古びた木の匂いが漂っていた。


 ——カタリ。


 何かが動いた気がした。


 (気のせい……?)


 ふと目をやると、五人囃子の人形の向きが、わずかに変わっている。


 それだけではない。神社の壁にかかっていた古い掛け軸が、わずかにずれていた。最初に見たときよりも、ほんの少し下に落ちているように見える——まるで、何かが触れたかのように。


 部屋のどこかで、小さな息遣いが聞こえた。

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