第3話 傷とともに赴任地へ

知らない土地で見慣れない色の地下鉄に揺られる。ピリついた空気、地面が息をしていなくて、見上げる空も狭くて……

「きっと、すぐに慣れるよ。」


先輩は励ましてくれたけど、私はずっと違和感を飼い慣らせないでいた。右足の親指の付け根はひりつき、履きなれないパンプスのせいでかかとは靴擦れを起こしていた。


「今月、売り上げ目標まで100万足りないけど、どうするつもり?」 

「新規で営業かけてるの?もう一押しが足りなくない?」

「新人にもすぐに1人前になってもらわないとね」


私が吸うべき酸素が奪われていく。オフィスという名の逆光合成された四角い直方体に私は閉じ込められている。そんな直方体が積み重なったこのビルをそんなビルがたくさんあるこの街を…もう何もかも壊してしまいたかった。


出張で東京に行かなければならない。けれど、準備する元気も無くて諦めて電話した。


「もう、休ませてください。仕事、できません。」



「そっか。しばらく休みな。」


もう、人生、どうでもよくなった。体内から奪われた酸素をただひたすら探し求める日々が始まった。


傷の治し方も、傷の原因も正直よく分からない。心が息できなくなったの原因は複雑に絡みついていてほどけない。


もうあんな場所で働きたくないけど転職できるのだろうか。


働きたくない。働けない。でも働けない自分は情けない。


実家の布団から起き上がれず、窓から見える電線に止まった雀を数えていた。


悲しみが襲ってきては、涙が出て。眠くなって普通に寝て。また泣いて。


この溢れる涙の止め方を誰も知らないし、教えてくれない。処方された薬を飲んでもあまり良くなっている感じはしないし。


でも、この自分の部屋は酸素はしっかりあったのでとりあえず生き延びてみようと決心をした。

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とりあえず生で~中途半端でなんも考えたくない私~ @shimashimaenaga

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