第9話

突然の珍事に、思わず父は笑った。気難しい父が初対面の相手にこんなに打ち解けた表情をするのを初めて見た。

「それならちょうど良かった。おい秋姫、食堂に料理が並べてあるだろう。あれをご馳走してやりなさい」

私は思わず反論した。

「だって、あれは春姫の誕生日の…!」

「どうせ食わんのだろう。構わんじゃないか。なぁ、おシゲさん」

「そうですねぇ…この方に召し上がって頂けると助かりますが…」

おシゲさんは私の顔色を見ながら控えめに答えた。

「あ、いえっ、僕はそんな、お食事を頂くわけには」

男があわてて遠慮する。しかし、父は押しつけがましいほどの陽気さで男を誘った。

「なぁに、いいじゃないか。食事がてら私の家族を紹介しよう。おシゲさん、春姫を起こしてきてくれ!」

私の困惑をよそに、父はすっかり有頂天だ。

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