9 11月~12月の出来事
第46話
11月5日。
広島市の天気は、すっきりとした快晴。
その日の朝、31万人もの大勢の人々が、平和大通りに集まりました。
平和大通りというのは広島市街地を東西に貫く長さ約4キロメートルの道路の名前です。
原爆で焦土と化した広島の復興のために作られたもので、道路の両側には人々が楽しんで散策できるよう、広めの歩道と公園が設けられています。
その平和大通り沿いに、今日はカープのユニフォームを着た人々が集まり、手に手に赤い小旗を持って、今か今かとその時を待っているのでした。
皆が待っているのは、カープの優勝パレード。
昭和50年(1975年)、カープが初優勝した41年前に、一度だけ開かれた優勝パレード。
その感動的なイベントが今日、この広島によみがえるのですから、それはもう見逃すわけにはいきませんよね。
というわけで、私も遠路はるばる長野から、広島の実家に帰省して見に行きました。
秋晴れの優しい陽射しに包まれて、そこに集まった人々は誰もかれもが穏やかに笑っていました。
お父さんに肩車されたカープ帽の少年も、手に「ありがとう」と書いた手製のプラカードを持った少女も、街道沿いのマンションの窓から手を振る人達も、工事現場のお兄さん達も。
やがて、大通りの向こうから、選手達を乗せたオープンカーや2階建てバスがやってきました。
一番先頭を走るオープンカーには、オーナーと緒方監督。
その次の車には、球団本部長と選手会長である小窪選手。
3台目のオープンカーには黒田と新井が乗っていました。
…いや、実は私自身はこの3台のオープンカーは見ていないんです(;´∀`)
何重にも重なった人垣の向こうにチラッと何かが通り過ぎていったのは見えたんですが、見えるのは人々の背中だけ。「くろだー!あらいー!」という人々の声で、誰が通ったのかがかろうじて分かったぐらいで(;^ω^)
その後に続く5台のオープンバスの上から手を振る選手やコーチの姿はばっちり見えました。
祐輔や大瀬良が笑顔で手を振ってくれたり、今季限りで引退する広瀬がお馴染みの「敬礼ポーズ」をしていたり。
また、このバスには助っ人外国人選手の家族や、いつもは裏方としてチームを支えるスタッフ、カープという球団を戦後から守り続けてきた広島県やその市町村の関係者も大勢乗っていました。
バスに乗っていた広島県知事は、沿道からの声の中で「ありがとう」という感謝の声が最も大きかった、と語っています。
カープは広島の復興の灯。
どんなに痛めつけられ、踏みにじられようとも、いつも広島の人々とカープは一緒にいた。情けない時にも怒りながらも愛し、まるで家族のように守ってきた。
お互いに支え合って、今日という日を迎えた。
「カープがここにある」という喜び。
見渡す限りの全ての人々が笑っている。
なんという「平和」なひとときだったのでしょう。
今でもその光景を思い出すと、心の奥に温かな光が灯ります。
見に行って良かった。あの場にいられて本当に良かった。
パレードが通過したのはほんの一瞬でしたが、それでも私の中で永遠に消えることのない素晴らしい思い出となりました。
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