救急部所属のレミ・コスト医師が、脳神経外科の手術に助手として入る一日を描いた医療お仕事短編です。
手術室の空気、清潔・不潔のルール、ガウンテクニック、手術中の緊張感などがとても丁寧に描かれていて、医療現場の臨場感を味わえます。
けれど語り口は重すぎず、レミ先生の人間観察と独特な着眼点のおかげで、思わず笑ってしまう場面もたくさんありました。
作者様が紹介されているとおり、本作は本編『◆Ave Maria◆』の第5部より少し前にあたるお話とのことですが、本編をまだ読んでいない私でもしっかり楽しめました。
ファンタジー本編のスピンオフだそうですが、こちらは医療者としての仕事に焦点を当てた現代ドラマ寄りの短編になっていて、レミ先生たちの関係性や背景を知らなくても、ひとつの医療お仕事ものとして自然に物語へ入っていけました。
好きなのは、医療描写の緻密さと、レミ先生のゆるくて親しみやすい語りのバランスです。
手術室という特殊で緊張感のある場所なのに、レミ先生の視点を通すと、医師や看護師たちの人柄まで自然に見えてきます。
リアム先生の神がかった技術、マティス教授の威厳、看護師さんたちの反応も含めて、現場にいる人たちがちゃんと生きている感じがしました。
最初は目元の話として笑っていたはずの「絶対領域」。
けれど最後には、タイトルにある「禁忌」という言葉が重みを帯びてきます。
医療描写が好きな方にも、登場人物同士のさりげない優しさを味わいたい方にもおすすめしたい短編です。
全9話という読みやすい長さの中に、仕事の緊張感、笑い、過去の謎、そして胸に残る余韻がぎゅっと詰まっていました。
おすすめいたします。
本編は◆Ave Maria ◆のスピンオフ作品です。
ですが、こちらの作品単独でも読めます。
医療従事者の方が書かれていますので
手術室の静謐さ、手術の緊張感がよりリアルに
伝わってきます。
その合間に挟まれるコミカルさと、文章の
読みやすさでするすると世界観に入っていけ
ます。
救い、救われる関係の、レミ先生とリアム先生の
関係性もとても良いです。本編よりもレミ先生の
お人柄も知ることができました……!
スピンオフ作品ですが医療ドラマとして成り立っているため、本編未読の方にもおすすめできます!!
全ての作品を読み終えてしまい、寂しい気持ちです。また新作に出会えるのを楽しみにしております……!!
人が人を救おうとするその瞬間、世界の輪郭がそっと変わることがあります。『手術と禁忌の絶対領域』は、そんな“誰かの命に触れること”の深奥を描いた、まるで静かに脈打つ詩のような物語です。
技術と使命、そして過去に秘めた想い。そのすべてがひとつの命題に収束する過程は、読み手の心にも優しく問いを投げかけてくれます。「生とは何か」「救うとは何か」。それは医療という領域を超えて、私たちの存在の在り方にまで及ぶ問いかけです。
へびつかい座のアスクレピオス——神話の象徴として描かれるこの名は、登場人物たちの内面とも静かに重なります。人を超える力ではなく、人を想う力。その儚くも強い光に、深く胸を打たれました。静かに、確かに、魂を揺さぶる一作です。
本作は多数のファンを持つ長編「◆Ave Maria◆」のスピンオフに当たります。
描かれるのは、とある手術の準備から執刀を経て終了に至るまでの流れです。その描写は緻密です。作者自身が心臓の弱い(これは病気ではなく精神的にビビりという意味)人は一部を読み飛ばすよう促すほどに。
読むと現代における手術の流れがよく分かります。いや、評者には医学知識がありませんから、分かったつもりになるように騙されているのかもしれませんが。
あれ? この構図、どこかで見たことがあります。手術のスタッフの中に、神業と称される技術を持ち、何かを隠しているような人物が……
分かったような気になるけれども、何か隠されているような気がする、まるで白い布に一点だけ染みが入っているような……
その医師の白衣についた染みは、何なのか。それが垣間見えます。
医療従事者の方が書かれた作品ですので、医療現場、手術室でのやりとりがとても説得力があります。
専門用語や論文のような難解な読み解くのに苦労するようなお話ではなく、わかりやすくリアルになりすぎないように注意しつつも、医療系のドラマとしてしっかりと綴られています。
その匙加減が絶妙だなぁと思いました。
緊迫の中にも笑いあり。
患者に対して真摯に向き合う方々、毎日いかに注意してくださっているのかが……読み終わった後は感謝の念でいっぱいになりました。
色々と教えてくださってありがとう。という気持ちです。
◆Ave Maria ◆のスピンオフ作品。
本編の方は現代ファンタジーで、魔法などの話もでてきます。
本編を知らなくても読めますし、本編を知っていたらさらに深い物語として読めます。
先にこちらを読んだ後、本編を読んでも面白いでしょう。
スピンオフ(この作品)の方は、ファンタジー(魔法要素)は控えめとなっていますが、そういう世界観だと心得ていた方が、すっと物語に入っていくことができると思います。
本作は、《医術の神・アスクレピオス》の話から始まり、医師という職業の神聖さを感じさせてくれる物語です。医師といえば、人の命を救う尊い仕事。そのイメージを活かしつつ、医療の現場ならではの緊張感がリアルに描かれています。
手術は時間との戦い。作中でも時間の経過が刻々と示され、読んでいるこちらも思わず息を詰めてしまうような緊迫感があります。一文字一文字が見逃せない――そんな印象がありました。
ところで、主人公は『サージカルキャップとマスクの間は……絶対領域だ』という迷言を吐いてしまう若い医師。そんな主人公ですので、作品全体の雰囲気を適度に和らげてくれました。
さらに本作は、長編 ◆Ave Maria◆ のスピンオフでもあり、物語の後半では「絶対領域」に込められたもう一つの意味が明かされます。本編を読んでいる方なら、そこでまたグッとくるはず。もちろん、本作単体でも楽しめますが、本編と合わせて読むと、さらに物語の奥深さを味わえると思います。おすすめします!
ステンドグラスのような透明感のある筆致で綴られる医療ドラマに交え、ふたりの医師の過去の邂逅と現在の心の交流が描かれています。
物語は医師レミの語りから始まり、医神の再来と称される卓越した技能を持つ医師リアムの述懐で幕を閉じます。
自らの外見や年齢を懸念し豊かな感情表現を見せるレミと美麗な容姿を持ちながらも、それ意に介さない感情表現の乏しいリアム。
対照的な描写が作中のふたりの存在感を際立たせています。
最終話で、孤高の性格に思えたリアムの内面がつぶさに描かれ、彼の自覚する使命が表題の意味を教示します。
本作は、美しくも巧みな構成をもつ物語です。
どうぞ、ご覧ください。