へびつかい座に導かれて──再生の物語

 人が人を救おうとするその瞬間、世界の輪郭がそっと変わることがあります。『手術と禁忌の絶対領域』は、そんな“誰かの命に触れること”の深奥を描いた、まるで静かに脈打つ詩のような物語です。
 
 技術と使命、そして過去に秘めた想い。そのすべてがひとつの命題に収束する過程は、読み手の心にも優しく問いを投げかけてくれます。「生とは何か」「救うとは何か」。それは医療という領域を超えて、私たちの存在の在り方にまで及ぶ問いかけです。

 へびつかい座のアスクレピオス——神話の象徴として描かれるこの名は、登場人物たちの内面とも静かに重なります。人を超える力ではなく、人を想う力。その儚くも強い光に、深く胸を打たれました。静かに、確かに、魂を揺さぶる一作です。

その他のおすすめレビュー

悠鬼よう子さんの他のおすすめレビュー1,112