第4話「魔導闘技ウィズアーツ」

 魔導闘技ウィズアーツ。

 魔女が編み出した、魔女のための格闘術。


 それは、地上をくまなく覆う『結界』を一時的に解除した特別な戦場リングで行われる。

 ——そこでは、すべての魔法がされる。

 

 強化魔法を纏った肉体による神速の攻防。

 無詠唱魔法を駆使した頭脳的な弾幕戦。

 そして、現実を書き換えるほどの奇跡をもたらす詠唱魔法。

 リングに火柱が上がり、氷刃が飛び交い、魔女たちは空間を歪めてそれを回避する。


 『ワルプルギス条約』の締結以来、人々が魔法という奇跡を目の当たりにできる唯一の場となったウィズアーツ。

 常識を軽々と踏み越える超常の攻防に、観客の目は釘付けとなり、その興行は瞬く間に世界を席巻した。

 だが、これはただの娯楽ではない。

 ウィズアーツの利益は「魔女の保護」のための拠出金として、『魔女連盟』に流れていく。

 つまり『ワルプルギス』にとって重要な資金源だった。


 今や、ウィズアーツの国際競技大会は、巨額の資金カネが飛び交い、世界中が熱狂する一大祭典イベント。ローカルな大会や独立団体も次々と芽吹いていった。

 だが、そうしたには「魔法使用許諾料」の貢納義務がある。

 ――「魔法使用許諾料」は高額だ。

 退屈な試合や平凡な興行では到底、賄えない。

 だからこそ、ウィズアーツはした。

 華麗な技。派手な魔法。緻密に練られたドラマ。観客を惹きつけるため、どれもが磨き上げられていく。


 その進化の中、トップを走る団体があった。


 18歳以下の選手。

 ――すなわち『魔法少女』だけが戦う団体、「マギア×ノクス」


 彼女たちの試合は、単なる戦いではない。

 華やかで、ドラマチックで、時に涙を誘う物語。それは見る者の心に焼きつき、永遠に消えることはない。

 「マギア×ノクス」は、いまやウィズアーツ興行の頂点だ。

 観客はもちろん、スポンサーやメディアまでもが『魔法少女』たちに熱狂している。

 「マギア×ノクス」に憧れ、『魔法少女』を夢見る少女は後を絶たない。


 ——お菓子の家や白馬の王子では、満たされない少女たち。

 彼女たちが求めるのは、甘い夢ではなく、熱狂と栄光。

 憧れを語るだけでは、そこへは辿り着けない。


 未来の『魔法少女』たちが、今日もひたむきに瞬間いまを駆ける——。

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