第3話
入社して2日目だ。今日も、昨日のように電車で会社に出勤する。
会社に着いてから
「おはようございまーす!」とあいさつをした。社員(課長含む)が「おはよう。」とあいさつを返してくれる。
そんな中、弥生だけハイテンションに
「侑大、おはよー!」とうるさい挨拶をしてくる。会社では他人のふりをしたほうが都合がいいので、
「おはようございます。」と普通の返事にしておく。弥生がムスッとした表情で睨んでくるが無視して、オフィスの自分の席に座る。すると、斜め向かいの課長の席から何か視線を感じる。(ん?なんだ?)と思い、課長の方を見ると、(ふーん。仲いいね。)とでも言いたげにこちらを睨んでいる。(機嫌悪くなったら、まずいな。)
と思い、課長に話しかけに行く。
「課長も侑大って呼んでいいですよ!」ちょっとキモかったか?と思い、双葉の反応を待つ。
「セクハラだから。やめて。」と侑大の方を見向きもせず、昨日のいたずらっぽい笑みとは正反対の冷たい目をした。
そこでようやく昨日の海老名さんとの飲み会での会話を思い出す。
『好きとかじゃないんだ。あの人はな、プライドが高いんだ。自分より適任な人がいたら、機嫌悪くなっちゃうんだよ。』その時はそんなことはないだろうと思っていたが、さすが、恋愛武勇伝を長時間語ることのできる恋愛経験の持ち主だ。これくらいお見通しなのか。
(これは僕が課長の自己肯定感を上げてあげるしかない!)と思い、勇気を出した。
「今日もお綺麗ですね!」
「セ、セクハラよ!」
耐えられなかったようだ。
今日も双葉にお世話係をしてもらう。すると、早くも、来客用のドアが開いた。
「こんにちは。今日はどんなお悩みですか?」と若い男性に問いかける。
「え、えーと、好きな人とLIMEで何を話せばいいか分からなくて…」
「わ、わかります。僕も最初はすごく緊張しました。」
(え?好きな人いたんだ。)と思いつつ、双葉が話し出す。
「日常的な会話とかだったら、話しやすいんじゃないですか?」
「そうですよ。最終的には僕も失恋しましたけど、仲良くはなれましたよ。」
(侑大を振った女許さん。)となぜか双葉が怒っていると、男性が話し出す。
「そ…そんな簡単なことでも良いんですか?じゃあ頑張ってみます!」
「解決しましたか?」
「はい、ありがとうございました!」
ここまで来た廊下を歩きながら少し話をした。
「ゆ…雄大くん彼女いたの?」
「え、侑大くんって?」
「よ…呼んでいいって言ったじゃん。」
「まぁ言いましたけど……。」
「だめなの?」
「い…いや、いいですよ。あ、あと告白したけど、断られたって感じですね。」
「へ、へぇ。」
そういうものなのだろうか。侑大を振るというその気持ちは双葉には理解できなかった。
その後、事務作業をして、侑大にとって2度目の昼休みだ。今日は僕から海老名先輩を誘ってみようと思い、海老名さんに話しかける。
「あの、一緒にご飯食べませんか?」
「いいよー。」だそうなので、一緒に小さな食堂へ向かう。今日は新入社員歓迎会とやらがあるそうなので、コンビニ弁当ではなく、食堂に売っている小さなおにぎりを食べることにした。海老名さんも同じ考えだったのか僕とは違う種類のおにぎりを買っていた。昨日と同じ場所に座って、食べようと思ったら、弥生がこちらに歩いてくる。
「ねぇねぇ、一緒に食べようよー。侑大」
意地でも会社でも関わりたいようだ。別に断る理由もないので、
「いいですよ。」と他人行儀な挨拶をして、僕の横に座らせる。海老名さんが横から睨んできている気がするが、まぁ一旦無視しておこう。
3人でご飯を食べていると、何か後ろから視線を感じる。後ろを振り向くと、課長がこちらを睨むように見ていた。僕がそちらに歩いていき、課長に話しかける。
「一緒にご飯食べます?」
「い…いや、別にいいよ。」今度は凹んでしまった。
「まぁそう言わず食べましょうよー」と海老名さんも加勢してくれる。
「じゃ…じゃあお言葉に甘えて。」と言って、弥生の隣に座った。
弥生が(逃げたな)とでも言いたげにこちらを睨んでいる。
その後4人で仕事の話をしながら、昼食を食べた。
「ねぇ川畑くん、トイレ行こー」と海老名さんが言ってきた。
「連れションとか子供ですか?」と課長は言うがまぁついていこう。
トイレにいく道中で「ねぇ、川畑くん、昨日言ったよね?朝も課長、君のこと睨んでたじゃん。」と海老名さんが言ってきた。
「は、はい。すみません。」
「あと、急に下の名前で呼んでいいなんて言われても呼ばないから。何回綺麗ですねっていうの?」
(流石の恋愛マスターでも、課長の行動は読めなかったか。実は侑大って呼んでくれたんです!)と思ったが、言ったらまた、めんどくさいことになるので、
「はい、気をつけます。」とだけ言っておく。
たぶん、いい人なんだろうけど、ちょっとお節介なのだろう。
トイレから食堂へ戻り、その後、オフィスに戻った。午後の業務も早めに終わって、待ちに待った新人歓迎会とやらが開かれる。部長が「今日は、新人歓迎会があるのでこの辺りで、終わりにしましょう。」と言って、社員に外に出るよう促す。会場の居酒屋についた。
「何名様ですか?」
「予約しておいた者です。」と部長が答える。
「はい、こちらへどうぞ。」と座敷を案内された。いよいよ、新人歓迎会の始まりだ。今日はいっぱい楽しもう。
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